寝る前にチーズを食べると「悪夢を見る」は本当? 食事と夢の研究
「寝る前にチーズを食べると悪夢を見る」という話を聞いたことはないだろうか。悪い夢を見ないよう、夜遅くはスパイシーな料理を食べないことにしている人もいるかもしれない。そういう人はたくさんいる。 心理学ジャーナルのFrontiers in Psychologyで2015年に発表された研究では、食事と夢の関連性を考察している。その結果、「寝る前に何を食べるかによって、見る夢の種類が変わると思う」と回答した人は、調査対象者396人のうち17.8%に上った。とりわけ、常習的に悪夢を招く食品とされたのは乳製品のようだ。 影響があると答えた人のうち、乳製品を食べると「嫌な夢を見る」と答えた人は44%、「奇妙な夢を見る」と答えた人は39%だった。乳製品に続き、特に嫌な夢を招く要因だとされたのがスパイシーな食べ物だ。また、でんぷんを多く含んだパスタや、甘いお菓子、肉類も、夢の内容に影響を与える食べ物として挙げられている。 この研究によれば、特定の食べ物と悪夢に関連性があると考えられる理由には、次の2つがある。 ■1. 食物に対する感受性 食べ物と悪夢の関連性を説明する上で考えられる理由の一つは、就寝前に食事を取ると、睡眠の質に悪影響が及び、その結果として、夢の内容が左右される場合がある可能性だ。 「何を食べるかによって、見る夢の種類が変わると思う」と回答した調査対象者の半分近く(47%)は、「夜遅い時間に食事を取った場合も、生々しい夢や奇妙な夢を見やすくなる」と考えていた。 さらに、そう回答した調査対象者は、嫌な夢を見ることが多く、睡眠不足気味で、コーヒーを多く摂取している可能性が高かった。また、「直感的摂食(空腹か満腹かといった体の声に耳を傾けて食べること)」が少なく、「感情的摂食(ストレス発散のために過食・拒食すること)」が多い、とも回答している。 この研究ではさらに、食べ物と悪夢の関連性は、生理学的要因にも起因する可能性が示唆されている。つまり、消化不良や、睡眠パターンの乱れ、さらには食物不耐性などが原因かもしれないわけだ。例えば、乳製品を食べると、消化器系が不調になって膨満感を覚えたり腹痛を起こしたりし、そのせいで眠りが浅くなったり、不穏な夢を見たりする可能性がある。 研究チームは、以下のように説明している。「睡眠障害は、胃腸の症状を誘発するものとして広く知られる食品の多くと関連性がある。乳糖不耐症が招く身体症状の多くは、夜の遅い時間に食事を取ったときに、睡眠や夢がどのような影響を受けるかを尋ねた自由記述式の質問への回答でも多数見られた」 特定の食べ物に対して過敏性が高くなると、食生活と夢の関連性に気がつきやすくなる人もいる。あるいは、夢に影響を与えるのは特定の食品ではなく、むしろ、その食品への拒絶反応や、生活上の異なるストレスが原因なのではないかという考えもある。 こうした影響は、万人に共通のものではない可能性がある。身体反応に敏感な人ほど、特定の食べ物と悪夢を結びつけやすくなるとも考えられるだろう。