3歳の子の「自律性を育てるチャンス」を潰す親の叱り方
親に怒られた子の心の中
ここで、ひとつのストーリーを紹介しましょう。 子どもが外で花を摘み、「お母さんにあげよう」と思って家に持って帰ってきました。自分の力で花を花瓶に入れ、「お母さーん」と喜んで渡そうとしたそのとき……。ガチャン!花瓶を落として割ってしまいました。 お母さんは「何やってるの!」と怖い顔で子どもを怒ります。さて、このお母さんは子どもが「大事な花瓶を割った!」という状況から怒ったのでしょうか? ここに怒りに関する大事なポイントがあります。 1 お母さんがその瞬間に感じるのは状況ではなく、お母さん自身の恐怖の感情です。 2 自分の恐怖をなんとかしようと子どもを怒るという攻撃反応が自動で起きます。 3 怒りが怒りを呼び子どものことなど考える余裕がなく、自分のことでいっぱいになってしまっています。 この状態では、お母さんのためにお花を摘んできたというお子さんの優しい気持ちにまで思いが至りませんね。お母さんの怒りの自動反応が起きなければ、事情を聞いてお母さんも怒るのではなく、お子さんの気持ちにうれしくなったのではないでしょうか? そして、いきなり怒られた子どもの心の中はどんな状態でしょうか……想像してみてください。お母さんにあげようと思ったお花を落としてしまってショックだったのに、お母さんにも怒られて、自分の感情はどこにも持っていけません。 3歳くらいまでの子どもは、まだ他者の視点が持てません。お母さんにお花を渡そうと思ったことを理解してもらえれば、わかってくれるかもしれない、なんて考えません。 だから、ただ「お母さんに怒られたから悲しい自分の気持ちを我慢する」ということが起きます。 こうやって、子どもの目で見たままのことが、頭の中に残るのです。とてもせつないですね。 お母さん自身の、この時期の課題を達成できていない未発達の心が、恐怖のスイッチを押してしまったのかもしれません。自分のことで精いっぱいで、お子さんのその背景まで想いを馳せることができなかったのかもしれません。 でも、こういうことが、お子さんの心の成長を未発達にしてしまうのです。これは、子どもの心の発達を知らないことによる連鎖の悲劇です。こうやって心の未発達の世代間伝達は行われていくのです。親も子も、誰も悪くないのです。 今は遺伝子にまで組み込まれていることがわかっているようです。どこかで止めなければいけません。どうか、あなたのところで止めてくださいね。