オーディション番組『timelesz project』レビュー。たゆまぬ努力で人は少しずつアイドルになってゆく
自分たちを信じてくれるファンへの思い
さらに、オーディションの模様を番組として公開する意味としては、なんといってもファンへの思いが大きいだろう。「5人揃ってSezy Zone」という思いは、長年苦楽を共にしてきたファンも、メンバーたちに負けない強さで抱いているはずだ。だからこそ、先述のインスタライブでは大きな賛否が起こり、その反応をメンバーたちも配信のなかでリアルタイムで受けとめた。 大好きなメンバーたちの決めたことを応援したい一方で、ずっと見守ってきたグループが変わっていく寂しさや不安も拭いきれない。そんな複雑な思いを抱えたファンにとって、現メンバーたち、そして仲間に加わるかもしれない候補生たちがどのような思いでオーディションに向き合っているのかを、番組を通じて深く知ることは、とても大切な機会になるだろう。 すでに配信済みのエピソード1、2を通じて実施された第二次選考では、歌や踊りなどの実技のほか、現メンバーたちによる面接審査が行なわれたが、このなかでメンバーたちは「timelesz、Sexy Zoneへのリスペクトがどれだけあるか」を非常に重視していた。その姿が安心材料になったファンも多かったかもしれない。 佐藤勝利は雑誌『anan』で「timelesz project」について語ったインタビューのなかで、「僕はずっとアイドルとしての自分に自信があったわけではない」という思いを吐露している。 それではなぜ続けてこられたのかといえば、「メンバー、家族、事務所、そして一番はファンの方」に、アイドルとして認めてもらったからなのだと言う。自分で自分を信じることができなくても、「アイドルであると信じてくれるファン」を信じていればこそ、ここまでやってこられた。応援してくれるファンへの強い思いを感じさせる言葉だ。
timeleszが掲げる目標
メンバーの菊池風磨、佐藤勝利、松島聡は、それぞれ個人でもタレントや俳優としてめざましく活躍している。そんなかれらが、大切なファンを悲しませるかもしれない「リスク」ともいえる、オーディションによる増員という選択肢をあえてとる理由は、アイドルとしての高みを目指すためにほかならない。 かれらはtimeleszの今後の目標として、「5大ドームツアー」「国立競技場でのコンサート開催」を掲げる。5大ドームといえば、東京ドーム、京セラドーム大阪、バンテリンドーム ナゴヤ、福岡PayPayドーム、札幌ドームの5つを指すことが多いが、この5つを制覇した実績を持つのは、事務所のグループのなかでも、SMAP、KinKi Kids、嵐、SUPER EIGHTの4組のみ(Snow Manも2024年11月から5大ドームツアーを開催)であり、確固たる人気と実力がなければ立つことのできないステージといえる。さらにその先の国立競技場ともなれば、有観客コンサートを行なった経験のあるアーティストは、SMAPやDREAMS COME TRUE、嵐、矢沢永吉など、国民的人気を誇るわずか8組にとどまる。 同事務所ではデビューからおおよそ3、4年以内には東京ドーム公演を行なうグループが多いなか、デビューから11年目を迎えた2022年にようやくその夢を叶えたかれらはいま、さらに大きな夢に向かって挑戦するために、このオーディションに賭けている。 候補生たちにとって、オーディションのゴールはアイドルになること。けれどそれはもっと大きな視点では、つねに上を目指して自分たちの力を磨いていく道のりのスタートに過ぎないのだ。