「『キャンティ』はみんなの連絡場所だった」「暁星は変なヤツがたくさんいるんです」村井邦彦×岡田大貮《特別対談・第1回》
パリの歓楽街で偶然の再会
村井:暁星っていうのはね、変なヤツがたくさんいるんですよ。例えばほら、普通の学校でさ、卒業すると僕たちの時代は特に、サラリーマンになる人が9割方だったんだよね。ところが暁星はちょっと違った。大ちゃんもそうだね。 僕は大ちゃんのことをね、強烈な印象を持って覚えているのは、パリに「ピガール」と呼ばれる地域があるんですよ。そこは、モンマルトルの山の下のところで、いわゆる観楽街だね。映画館劇場、キャバレー、バー。あんまり品がいいところじゃなくて(笑)。 例えばね、旅行者を連れ込んで高額なシャンペンを飲ませて……いわゆるなんていうんですか。 岡田:連れ込みみたいな(笑) 村井:そうそう。まあ、ただ、その中には偉大な芸術家もたくさん生まれているからね。ただ下品なだけの街じゃないんだけれど。ある日、夜になって、そこを僕が歩いていたら、大ちゃんがね、将軍が着ているような制服を着て帽子をかぶって歩いているんだよ。「何してんだよ!?」って(笑)。あれはそこらへんのキャバレーか何か? 岡田:『トップレス』っていう店があったんですよ。名前からしてもう身も蓋もないですね(笑)。僕の親父がかつて赤坂で『ミカド』っていうナイトクラブをやっていたんですが、そこに来ていたピーター・ジャクソンっていうフランス人。どうもいい加減な名前のその人が『トップレス』のオーナーだったのね。 それで向こうに行った時にピーター・ジャクソンにお世話になった。いろんな面白いところ連れて行ってもらってね。ある時突然ね、「自分の店をちょっと手伝ってくれ」って言われて、それで行くことになった。たぶん、村井さんにお目にかかった時はドアマンをやっていたはずですね。 村井:「旦那、面白いですよ」って(笑) 岡田:どうもドアマンのアラブ人が休んじゃったらしくその代わりでね。そいつがけっこう体が大きくて、でもそのユニフォームしかないから、ちょっと余っていたけどそれを無理やり着せられて。ドアマンは2~3回やりましたかね。 村井:ホントに偶然。歩いていたらさ、「なんか見覚えのある顔だな…」って。「ええ~!?」って(笑)。「大したもんだ」と思ったんです。学校を出てね、いい会社のサラリーマンになる人も立派かもしれないけど、ピガールでこういうことができるっていう根性がすごいと思ってさ。それ以来、ずっと仲良くしているんです。