[特集/欧州戦線を変える新監督3人 02]覇権奪還は38歳の青年監督に託された 新生バイエルンにコンパニが必要だった理由
ブンデスリーガ随一のメガクラブは厳しい目で評価される。史上初となる11連覇で絶対王者として君臨していたが、昨シーズンは無冠に終わった。わずかな低迷も許されないバイエルンは新たにヴァンサン・コンパニを監督に迎え、最短での王座奪還を狙っている。 期待された伊藤洋輝はキャンプ中の練習試合で負傷してしまったが、即戦力のジョアン・パリーニャ、パリ五輪で活躍したマイケル・オリーセなど効果的な補強も行っている。バイエルンが2シーズンに渡って無冠に終われば、ブンデスリーガのなかでそれは大事件となる。大役を任されたが、監督経験は浅いコンパニがどうタイトルをもたらすのか。挑戦者として挑むバイエルンの動向から目が離せない。
コンパニが志向するのは能動的に仕掛けるスタイル
コンパニの初陣となったのは、7月25日のロタッハ・エガーンとのトレーニングマッチで大勝(14-1)している。EURO2024、コパ・アメリカ2024、パリ五輪が開催された関係でまだ合流していない選手が多かったが、この試合をバイエルンは3バックで中盤にアンカーを配置する[3-3-3-1]とも[3-1-2-3]とも表現できる布陣でまずは戦っている。 先発メンバーは以下の11名だった。GKスヴェン・ウルライヒ、DFヌサイル・マズラウィ、ヨシプ・スタニシッチ、エリック・ダイアー、MFハビエル・フェルナンデス、レオン・ゴレツカ、ラファエル・ゲレイロ、ガブリエル・ヴィドヴィッチ、FWアディン・リチーナ、ブライアン・ザラゴサ、マティス・テル。フェルナンデスとリチーナはレギオナル・リーガを戦うバイエルンⅡのプレイヤーで、後半になると同じく若い選手にガラッとメンバーが変更されたが、システムは3バックのままだった。 続いて28日に行われたデューレンとの一戦も3バックが採用され、最終ラインは左から伊藤洋輝、キム・ミンジェ、ヨシプ・スタニシッチとなった。中盤のカタチに変更があり、ダイアー、ゴレツカのダブルボランチで、左にゲレイロ、右にサシャ・ブイ。前線の3枚がリチーナ、ザラゴサ、テルという[3-4-3]だった(結果は1-1)。 既報の通り、この一戦で伊藤は右足の中足骨骨折となり、復帰時期未定の離脱となってしまった。倒れた相手選手の背中が激突して痛めたもので、しばらくプレイしていたが自らピッチに座り込んで続行不可能に。新天地でポジション獲得を目指していた伊藤にとっても、最終ラインの複数のポジション、さらには中盤での起用も考えていたかもしれないバイエルンにとっても想定外の出来事となった。 最終ラインのコマが1枚減った影響なのか、主力が戻ってきたからなのか、その後の試合でコンパニは4バックを採用している。昨シーズンまで指揮したバーンリーでは[4-4-2]をベースに、ポゼッションを高めて攻撃を仕掛けるサッカーを志向していた。現役時代にマンチェスター・シティでジョゼップ・グアルディオラの指導を受けているコンパニは、やはり能動的に主導権を握るスタイルを好む。 また、バイエルンは11連覇中、長く4バックで戦ってきた。なかには3バックに変更した試合もあったが、とくに昨シーズンはそれで良い結果が出たわけではなかった。こうした事実を照らし合わせて考えると、コンパニのもとで今シーズンを戦うバイエルンのシステムは、8月に入ってから採用した[4-2-3-1]になると考えられる。