[特集/欧州戦線を変える新監督3人 02]覇権奪還は38歳の青年監督に託された 新生バイエルンにコンパニが必要だった理由
戦力は揃っていないが準備状況はまずまず
11日のトッテナム戦はより多くの主力を加えて戦っている。3日と同じく[4-2-3-1]でCBにダヨ・ウパメカノ、右ウイングにジャマル・ムシアラが入り、CBだったスタニシッチが右サイドバックを務め、右ウイングだったニャブリが左ウイングへ。左ウイングだったテルがトップに入った。 この試合でも高い位置からのプレスが奏功し、ゴールを奪っている。1-1で迎えた31分、相手GKが縦に出したルーズなパスにムシアラがチャレンジし、ボールがこぼれる。これが高いポジションをキープしていたミュラーに渡り、マイナスのラストパス。走り込んだニャブリがミドルレンジから正確なシュートでゴールネットを揺らした。 GKからビルドアップしてくる相手に対してサイドへのパスコースを潰し、中央に下がってきた背中を向けたボランチに縦パスが出されたときにチャージをかける。2試合続けて同じカタチで得点しており、コンパニの指導が徹底され、選手たちがそれをしっかり実行していると感じられる2ゴールだった。 各選手の立ち位置もかなり流動的で、前線ではテルが左サイドに流れることが多く、ムシアラ、ミュラー、ニャブリもそれぞれのポジションを確認しながら的確なポジションを取る。これは3日のトッテナム戦でも同じで、トップに入ったヴィドヴィッチがサイドに流れ、空いた中央にニャブリやミュラーが入ってくる。それだけではなく、サイドバックも飛び込んでくる。コンパニのもとでこの流動性をどうコントロールしていくか、試合を重ねたときの完成度が注目される。 攻撃面ではポジティブな要素が見られたが、守備では昨シーズンから続く不安定なところがあった。11日の試合では前にかかり過ぎていて最終ラインの裏にスペースがあり、そこを突かれて2失点している。ウパメカノの後ろに下がりながらの守備、左右に振られたときのキムの対応、中央を破られたときのサイドバック、ボランチのサポートなど、精度アップが必要な改善点がどうやらありそうだ。 伊藤が負傷したことで、最終ラインに補強された即戦力はスタニシッチだけ。中盤にボールを刈る能力が高いジョアン・パリーニャを獲得したが、まだバイエルンでの稼働がなくどれだけチーム力アップになるか未知数だ。屋台骨となるボランチ候補は、キミッヒ、パブロビッチ、パリーニャ、ゴレツカ、ライマー、ゲレイロなどコマが多い。コンパニにとっては、シーズンがはじまってもしばらくは答えを探す時期になるか。 また、ハリー・ケインが登場したのは11日トッテナム戦の80分からだった。推定5300万ユーロ(約92億円)の移籍金で獲得したマイケル・オリーセは、パリ五輪を終えたばかりでトレーニングマッチにまだ出場していない。長いシーズンの途中には伊藤やレロイ・サネなど負傷中の選手が復帰するだろうし、夏の移籍期間にさらに戦力アップをはかる可能性もある。逆に、いなくなってしまう選手もいるだろう。 すなわち、コンパニのチーム作りは試合を重ねながら、選手の組合せを考えながらになる。求められるのは結果(=勝利)を出しながら仕事を進めることで、そうでないと選手、クラブ、サポーターにストレスが溜まってくることになる。そういった意味で、すでに方向性が垣間見えていて、トッテナムとのトレーニングマッチに連勝するなど結果も出している。コンパニ体制となったバイエルンは、まずまずの準備状況でシーズンを迎えることになる。 文/飯塚健司 ※電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)第296号、8月15日配信の記事より転載
構成/ザ・ワールド編集部