「うちの子、“ごめんなさい”が言えなくて…」元小学校教諭が語る「反省できる子」に育てるために親ができること
「ごめんなさい」が言えないのはなぜ?
「うちの子、なかなか謝れなくて…」子どもが素直に謝れないのはなぜなのでしょうか?  叱っても効果がない…そんなときは、子どもの心に寄り添う「聞き方」が大切です。 「成績が良かったのになぜこんなことに…」突然“通信制に行く”と言い出した息子。受け入れられない母親が見落としている“根本的な問題” そこで、ポットキャスト2冠を達成した人気番組「子育てのラジオ『Teacher Teacher』」のMCで、元小学校教諭の福田遼さんと、同番組のプロデューサーである秋山仁志さんの著書『先生、どうする!? 子どものお悩み110番』(PHP研究所)から一部抜粋して、「Q.素直に謝れない息子。どうすれば反省できる?」というトピックスをご紹介。 子どもの心に寄り添うことで、自然と反省へと導く方法を元小学校の先生ならではの視点で解説してくれます。
Q.素直に謝れない息子。どうすれば反省できる?
A.まずは自分の気持ちを吐き出してもらおう 【親御さんからのお悩み】 小学三年生の息子は、もともと口が達者で、成長期と共に頭の回転が早くなったのか、最近は理詰めで問い詰めるようなことをよく言います。 昔から謝ることに対してのハードルが高いようで、友だちにきつい言い方をしてしまっても、謝れないことが多々あります。 その都度、息子には「〇〇なことが嫌だったんだね」と共感しながら、「でも相手を嫌な気持ちにさせたことに対しては謝れるようになろう」と伝えてきましたが、なかなか素直に謝れません。素直に相手の気持ちを受け入れ、感謝や反省ができるようになるには、どうすればいいのでしょうか?
「反省」が起こるメカニズム
【ひとし】 素直に謝れないというお悩みです。まだ小3だと、よくありそう……。 【はるか】 そうだね、なかなか素直に謝れない子は多いと思う。でもしっかりと反省して、素直に謝ることができる心を育てていきたいよね。 【ひとし】 ちゃんと反省してこそ「謝らなきゃ」と思えるわけだからね。 【はるか】 うん。そこで今回は、人間が自分の過ちを反省するにいたるプロセスからお話ししたいと思います。 臨床教育学者で、刑務所での受刑者の更生支援にも携わっていた岡本茂樹(※1)さんは、著書『反省させると犯罪者になります(※2)』の中で、反省のメカニズムをこう説明されています。本当の反省は、自分の気持ちをすべて吐き出した後に自然と起こるものだ、と。 ※1 岡本茂樹:臨床教育学者。元立命館大学産業社会学部教授。大学での研究・教育活動のかたわらで、刑務所での受刑者の更生支援にも携わった。 ※2 参考文献『反省させると犯罪者になります』(岡本茂樹著、新潮社) 【ひとし】 どういうこと? 自分の気持ちを吐き出す? 【はるか】 吐き出すっていうのは、たとえば人に話すとか、書き出すとかかな。岡本さんは罪を犯した人を事例に語られているんだけど、受刑者は、自分自身の中にある悲しみや苦しみといった感情を吐き出してようやく、心の奥から自然と謝罪の言葉や反省が湧いてくるとおっしゃっていました。 【ひとし】 なるほど……。 【はるか】 もうすこしわかりやすいように、僕の体験談を話してみるね。僕もかつては、子どもに対してどうにか反省させようとしていました。たとえば、友だちを叩いてしまった子がいたら、「なぜ叩いたらいけないのか」と理屈で説明をして、「反省しようね」「『ごめんなさい』を言うのは大事だよ」と説いていたんです。 でも、たとえどれだけ正論を伝えても、納得しない子が多くって。口では「ごめんなさい」と言うけれども、僕の顔をにらみつけていたり、どう見ても反省していないな、と思うことがよくありました。 【ひとし】 「とりあえず謝ればいいんでしょ」みたいになっちゃうのか。 【はるか】 そうそう。そんなときに岡本さんの本を読んで、僕も、まずは子どもたちの話を聞くことに徹するようにしてみたんです。たとえば、「こんなことが嫌だったんだね」と気持ちを代弁したり、「それは嫌な気持ちになるね」と共感したり。そうやって聞き続けていたら、自然と子どもが「だけどやっぱり叩いちゃいかんかったな」って言い出したんだよね。 【ひとし】 へぇ! 自分から反省を口にしたんだ。 【はるか】 そう、こっちが質問したわけでもなく、勝手に子どもからそんな言葉が出たから、本当にびっくりした。そのとき、「これが反省までの流れなんだ」と体感できた気がしたんです。 【ひとし】 なるほどね。言われてみれば自分も思い当たる節があるかも。 【はるか】 ひとしも経験ある? どんなとき? 【ひとし】 たとえば仕事でミスをして、上司から叱られるとき。その瞬間って、どうしても「ミスは自分でもわかってるし」「なんでそんな言い方するんだろう」みたいな感情がブワーッて湧いちゃうんだよね。心の中で、言い訳とか反発心とかを出し切った後に、やっと冷静になって「でも、俺があのときこうしたら良かったな」と本当に反省できる気がする。 【はるか】 まさにそれだね! もちろん子どもによっては、自分だけではそこまで感情がたどり着かない子もいます。そういうときは、話をしっかり聞いた後で、「〇〇くんの気持ちはすごくよくわかった。だけど、それって相手の〇〇くんにとってはどうだったのかな?」と相手視点で問いかけてあげるといいと思います。 【ひとし】 なるほど。