AIコンパニオンで変わるZoomの在り方 　こうしたYuan氏の話を聞いていて、気付いたことがあった。それは、AIコンパニオンが登場してきたことによって、Zoomの在り方が変わるのではないかという点だ。 　ウェブ会議ツールのZoomについて、ZVCはかねて「コミュニケーションプラットフォーム」との代名詞を使い、最近ではチームのワークスペースを想定して「コラボレーションプラットフォーム」とも呼ぶようになった。 　しかし、AIコンパニオンが登場してきたことによって、ZoomはAIコンパニオンが活動する場（空間）になるとも捉えられるのではないか。これから人々がそれぞれにAIコンパニオンを使うようになると、Zoomによる会議ではリアルに参加している人とバーチャルなAIコンパニオンが混在して議論するようになる。こうした形が新しい働き方になるというのが、Yuan氏の思惑ではないか。同氏はこうした環境を「デジタルツイン」とも表現した。デジタルツインのリアルとバーチャルな空間を行き来するのが、Zoomの場合はAIコンパニオンなのである。 　「AIコンパニオンをフル活用することが、Zoomの新たなワークスタイルだ」 　Yuan氏はこうも強調した。 　このところ、企業ではオフィスへの出社回帰の動きが広がりつつある。そうなると、コロナ禍での在宅勤務やリモートワークの拡大に伴って一気に普及したZoomの需要も落ち込むのではないか。実はそんなことを考えながらYuan氏の話を聞いていたが、ひょっとしたらAIコンパニオンが会議の在り方、ひいては働き方そのものを根本から変える存在になるかもしれない。 　ただ、分身のようなAIコンパニオンが本当に実現するのか。リアルとバーチャルの間で齟齬（そご）が起きないか。この動きはZoomにとどまらず、人間による基本的なコミュニケーションの在り方にも関わる話なので、そうしたリスクもしっかりと見据えながら取材を続けていきたい。