「『交付金を倍増する』と言われているけれど…」 ”日本一老いる村”の村長が訴える地方創生の現実
要は、交付金(の使い道として)はハード事業がダメで、ソフト事業だと。だけど、村単位ではソフト事業は厳しく、基本的には村が必要とするのはハードがほとんどだ。地方創生だと、移住者が住むところがないといけないので、アパート形式のものを整備したり、交流したりするようなものを建てる必要がある。 (ソフトでいうと)この村は非常に観光が弱いが、これから立ち上げようにも、ノウハウがない。結局コンサルに頼まないと何もできないが、人頼みだとうまくいかないかもしれない。いきなりこの村を観光で生きる村に変えるわけにはいかないし、ソフトに金を使う意味があるのかと思う。
今まで箱物ばかり作るから箱物に頼らないように(ハードを作るな)と国が言うのはわかるが、ソフトで村は変えられない。交付金を倍増すると言われているが、もう少し手綱を緩めて、市町村に使い方を任せてもらいたい。最初から門前払いせず、こちらが提案すればメニューを作ってほしい。 ――地方創生をコンサルに丸投げする自治体も多いという指摘が上がってきました。 ふざけていると思ったのは、いちばん最初に地方創生の将来計画を立てるわけだが、そのときに全国の多くの自治体がコンサルに頼んでいた。
うちもそうしないとやっていられないと言う職員がいたが、自分の自治体がこれからどう動くかを人任せにするのは許されるのかと思った。村を知らない東京のコンサルが出した計画でなく、ここに住む自分たちが将来のことを考えてやろうと言った。 ■画一的なメニューでは絶対失敗する ――前の岸田政権では「デジタル田園都市国家構想」がキーワードでした。情報通信技術を使って、都市と地方の格差をなくすという発想ですが、村のデジタル利活用はいかがですか。
まず引っかかるのは、「デジタル田園都市国家構想」という名前だ。南牧村は、田園でも都市でもないし、そんなもののメニューがこっちに合うわけがない。(群馬県の大都市である)前橋市や高崎市を目指しても意味がまったくないと思うが、みんな同じ所を目指せ、みたいなメニューが多すぎる。 ここは70%がお年寄りで、メールすら送れない人たちがいっぱいいる。例えば、過去にパソコン教室のようなものをやったときは、最初は100人も来たけど、1カ月経ったら2人しか残らなかった。