「証券優遇税制」終了へ 売る?売らない?悩ましい投資家
証券業界では来年1月から「少額投資非課税制度」(NISA)がスタートしますが、もう一つの話題が、今年末の証券優遇税制の打ち切りです。これによって来年1月から、株式と株式投資信託の譲渡益にかかる税率が現在の10%から20%へと倍になります。アベノミクス効果による株価上昇で利益を拡大した投資家も多いと言われていますが、節税を考え年内に持ち株を売却するか、日本株のもう一段の上昇を見込んで売らずに保有し続けるのか。優遇税制終了まで残り4カ月を切り、個人投資家にとって悩ましい年末になりそうです。
税率が10%から20%へと倍に
株式や株式投資信託の売却益や配当などにかかる税率は本来20%(復興特別所得税は別)ですが、株投資の促進を狙って導入された証券優遇税制はこれを10%に軽減するものです。2003年にスタートし、時限措置ながら約10年にわたって続き、株式取引量の維持に一役買っているという評価もありました。しかし、富裕層に有利に働いているという批判も出ていたことから、今年3月末に成立した税制改正法によって打ち切りが決まりました。 インターネット取引証券で個人投資家向けに強みを持つ松井証券は「今のところ証券優遇税制打ち切りについての相談はまだ少ない」としながらも、「例年10月から年末にかけては取引が拡大する時期で、今年は優遇税制終了も見合って投資家にとって難しい判断になるのでは」と指摘。「個人投資家の参加の多い新興市場は荒っぽい展開になるかもしれない」と話しています。一部の証券会社では優遇措置廃止の対応について呼びかける資料なども配布し始めました。
「NISA」へ避難の動きも?
一方、証券優遇税制の打ち切りに代わって登場するのが「NISA」です。これは1年当たり100万円までの投資について株式の譲渡益や投資信託の配当金が5年間、非課税となる仕組みになっています。節税目的で利益を確定し、NISAに避難するという動きも当然出そうです。しかしNISAは一人1口座に限られ、「個人投資家は短期で取引しアクティブに動く人も多く、年100万円の枠は使いにくい」という声もあります。このため「NISAの枠が拡大する可能性はないのかといった問い合わせも増えている」(大手証券営業担当者)といいます。ただ、NISAは証券取引のすそ野拡大が目的なだけに、制度がある程度浸透するまでは100万円の枠を拡大するという可能性は低いとみられます。 安倍政権誕生後の「アベノミクス」効果による期待感から、日本の株価は昨年末から春にかけて大きく上昇。含み益を拡大した個人投資家も少なくないとみられます。しかし、その後株価は一進一退の様相で、混迷するシリア情勢などの影響もあって年末に向け読みにくい状況になっており、「今後の株価がどうなるのか様子見して、節税で売却するか最後まで迷う個人投資家は多いのではないか」(大手証券担当者)とみられます。