100万円のペットを飼育放棄――問われる飼う人のモラル、免許制を導入すべきか
免許制の導入を
同様の意見は多くの保護団体からも出ている。前出のSPAの齋藤さんは「ペット飼育の免許制」を強調する。 「飼育に関して最低限の知識を確かめ、免許を得た人のみが飼えるようにするべきです。ハードルを少し上げることで安易なペット飼育を一定程度防げると思います。その上で、虐待や飼育放棄など問題を起こした飼い主には免許を剥奪して飼えなくする。過去に飼育放棄した人が何年かしてまた飼うというのはおかしな話です」 免許制が実現すれば、「60歳以上の人は新たにペットを販売業者から買うことはできない」などの規定も設けられ、高齢者の飼育放棄に対応しやすくなる可能性がある。ただし、一律に年齢で区切るのではなく、適切に飼い続けられるかどうかという外部の評価が加われば、公平性も保たれる。
みなしご救援隊の佐々木さんは、事前講習の重要性を説く。 「犬や猫はちょっと勉強すれば、誰でもちゃんと育てることができるし、本当の家族のようになれます。でも、いまはその『ちょっと』をせず、いきなり飼いだしてしまう人がいる。だから、理解も我慢もできず、手放すことになる。専門の機関で講習を受け、犬や猫の特性を知り、付き合い方を学ぶ。そうして証明書がなければ飼えないようにするだけで、全然違うと思います」
都内の大手IT企業に勤める30代の女性は「今は完全に猫中心の生活です。何より癒やしになってくれています」とうれしそうに語る。1年前に結婚、今年に入って一戸建てを購入し、ペットを飼える環境が整ったことから、4月に晴れて猫、サイベリアンを飼い始めた。 「コロナ禍が始まった昨年3月からリモートワーク中心となり、今では完全に在宅です。飼うにあたっては事前に検討を重ねました。今後十数年ずっと一緒にいるわけですからね」 ペットは人間の生活を豊かにしてくれる存在だ。コロナ禍のなか、犬や猫が家族になり、その大事さを知った人は少なくないだろう。であるなら、ともに暮らす責任への意識はどうか。ペットを飼う人が増え続けるいま、検討されるべきかもしれない。
--- 小川匡則(おがわ・まさのり) ジャーナリスト。1984年、東京都生まれ。講談社「週刊現代」記者。北海道大学農学部卒、同大学院農学院修了。政治、経済、社会問題などを中心に取材している。