100万円のペットを飼育放棄――問われる飼う人のモラル、免許制を導入すべきか
「コロナ前は犬猫合わせて400~500匹の掲載だったのが、コロナ禍に入ってから800~900匹になりました」(株式会社PETOKOTOの執行役員・井島七海さん) いわば空前のペットブームだが、そのようななかで懸念されているのが安易な飼育放棄だ。
安易に手放す飼育者たち
「緊急事態宣言解除後の昨年5月末から8月の間に『飼えなくなった』と立て続けに13匹を保護することになりました」 NPO法人みなしご救援隊の佐々木博文理事長はそう語る。広島県に本部がある同団体は、飼育放棄された犬猫の保護と譲渡活動をしている。東京支部では昨年、ペットショップで買って間もない段階での飼育放棄が例年より多かったという。 例えば都内のある父親は、一斉休校で家にいる時間が長くなった子どものために小型犬を買った。しかし、飼育方法が分からず、戸惑っているうちに学校が再開となり、飼うのが面倒になって佐々木さんのところに渡しにきたという。
こうしたコロナ禍の飼育放棄は東京都区内で多く発生したと佐々木さんは指摘する。犬はペットショップで購入された小型犬が多く、人にも共通点があったという。 「いい車に乗って、いい時計をして、身なりがちゃんとしていました。富裕層というイメージでしょうか。購入したときのペットの価格を聞くと、50万~100万円と高価でした。そこまでの金額を支払ったのに、飼育がうまくいかないと『いらない』という。ペットをモノとしか考えていないようでした」 みなしご救援隊東京支部が運営する保護犬猫カフェを訪ねると、まだ生後3カ月で1週間前に来たばかりの黒いトイプードルがいた。放棄したのは64歳の独身男性だったと東京支部長の杉山遥さんが言う。
「70万円ほどでペットショップで購入したそうです。放棄した理由は『トイレがちゃんとできない』『早朝にほえてうるさい』でした。男性は犬を飼った経験がなく、犬についてほとんど理解していませんでした。聞き取りしたら、『え、しつけをすれば直るもんなんですか?』という反応でした。『そうですよ』と話したのですが、電話の1時間後にはこちらに連れてきていました。もう耐えられなかったのでしょう」 佐々木さんは、こうした飼育放棄が今後も増加するとみている。以前から広がりつつある飼育放棄に「高齢者」という傾向が出てきているためだ。 飼育し始めたものの、「認知症になった」「入院することになった」「お金が回らなくなった」「体力的に世話ができなくなった」、そして「亡くなった」という結果になっているのが、この4~5年の傾向だという。 「つい最近も、84歳の男性がペットショップでビーグルを買ったものの、3カ月後には認知症が悪化。男性が介護施設に入ったため、ビーグルを引き取りました。老夫婦のどちらかが亡くなって寂しくなり、犬や猫を飼うという方は少なくありません。しかし、高齢者は病気になったり、お金が回らなくなったりで手放してしまうことがよくあります」