100万円のペットを飼育放棄――問われる飼う人のモラル、免許制を導入すべきか
ペットショップの問題点
癒やしを求め、犬や猫を飼う。それ自体は悪いことではない。だが、10年以上の継続的な世話が必要ということや、それにかかる費用を想像できていない人は少なくない。その場の「かわいい」と感じた思いだけで犬猫を迎え入れると、現実に戸惑い、飼育放棄に至ることになる。 犬猫の保護団体であるNPO法人SPA(東京都)の齋藤鷹一代表は、ペットショップの安易な販売主義が飼育放棄を広げていると指摘する。 「小型犬を求めていた男性に、ダルメシアンの子犬を『この大きさのままです』と言って売ったショップがありました。その後どんどん大きくなり、体高が60センチほどになり、男性は『飼えない』となった。あるいは、『動物アレルギーだから飼えない』という客に対して、『トイプードルなら毛が抜けないから大丈夫です』と言って売ったショップもある。飼ってみるとアレルギーが出た。どちらも無理に販売したために、飼い主は手放さざるをえなかった。問題は『売れればいい』という販売主義。生き物を販売するのであれば、購入者に対して最低限、飼い方の知識を与える義務があるはずです」
ペットショップやブリーダーといった「供給側」への法規制、とくに犬猫の成育環境という点では近年厳しくなっている。 今年6月に施行された改正動物愛護法では、飼育するときに確保すべきスペースの大きさを具体的に明記するなど事業者に対する「数値規制」を盛り込んだ。議員立法によるこの改正法案を取りまとめた牧原秀樹衆院議員はその意義をこう語る。 「以前は劣悪な環境で犬猫を育成している事業者がいても、警察も刑事事件として扱いづらかった。虐待の定義が曖昧だったからです。そこで改正愛護法では、『虐待かどうか』という定性的な判断ではなく、『ケージの大きさ』などの定量的な点で取り締まれるようにしたのです」
法改正で、事業者側の無理な繁殖や多頭飼育については規制が強化された。だが、神奈川県で犬の保護活動を行っている特定非営利活動法人KDP(神奈川ドッグプロテクション)の菊池英隆代表は、それだけでは不十分だと指摘する。 「なかなか指摘しにくいところではあるのですが、やはり問題は飼い主ではないでしょうか。そもそも飼い主側がちゃんと育てていれば問題は起きないのですから、消費者側にも問題があると思います」 横須賀市にあるKDPのシェルターを訪れると、50匹もの犬が暮らしていた。慎重に里親と面談などをしたうえで、譲渡しているという。菊池さんはこう話す。 「捨てない人のほうが圧倒的に多いのですが、飼う人が増えることで捨てる人も増えてしまう。捨てない人たちできちんとした見本を見せて、捨てるような人の立場が悪くなる、恥ずかしく感じるような社会をつくっていかないといけない」 では、飼い主がペットを「捨てない」ようにするには、どうすべきなのか。