「会社から期待されていなかった…」広告ゼロでもヒット続く『白湯』、ユーザーの4割が男性 異例のホット飲料“通年販売”が奏功
■夏は売上落ちるホット飲料をなぜ“通年販売”に? 広告ゼロでも店頭陳列が最大の宣伝効果に
『白湯』の販売先はコンビニがメインで、一部ドラッグストアやスーパーなどでも展開。薬を飲む時の需要から、ドラッグストアや調剤薬局、病院の売店でもよく売れています」 販促については、TVCMなど大々的な広告は特に行っていない。「そもそも期間限定品として発売し、おいしい水ブランドのメイン商品でもなかったため、『白湯』は社内的にはあまり期待されていなくて、他の部署から『何かやっているぞ』みたいな感じで見られていました(笑)」 その『白湯』が、発売時から想定をはるかに上回る販売数を記録。通常、ホット飲料は冬場限定の商品だが、習慣性の高い『白湯』に関しては「通年販売してほしい」という声も多数寄せられた。そこで通年販売に踏み切ったわけだが、これも売上拡大につながった大きな要因だった。 「弊社はこれまで数多くの商品を販売してきましたが、ホット飲料の通年販売は、異例の試みでした。やはり夏場は暑くなったらどうしても売れなくなるので、“作っても売れない”リスクが高く、『売れないものは置かない』というスタンスの店舗が多い。そこの調整が難しく、需給の観点では正直すごく大変でした」 実際、2023年夏の売上は、冬期に比べれば当然落ちたものの、一定の売上を担保できた。 「昨年は5月から暑かったですが、データを見ると、同年の11月よりも5月の方が売れていたので、驚きました。夏期のホット飲料枠は数少ないですが、お店の方もニーズがあることを感じてくれていたので、棚を確保することができました。結果、他のホット飲料のように、秋期に改めて採用に向けた商談をする必要がなかったですし、プロモーション費用がほぼゼロでも、通年でコンビニの棚に置かれたことで認知が広がりました。CMを打つより店頭に置き続けている方が断然効果が高いと言われますので、これはすごく大きかったと思います」
■一度は終売した『天然水ホット』の失敗を糧に、時代とネーミングがマッチしたヒット
実はアサヒ飲料では、『白湯』を発売する8年前の2014年に中身は同じながら、商品名が異なる『アサヒ 富士山のバナジウム天然水 ホット』を発売していた。しかし、あまり売上が伸びずに終売。その経験を経て、現在『白湯』がヒットしている。これには時代背景の変化もあるが、ネーミングの変化も大きかったという。 「当時は『ホット天然水』という商品名でしたが、社内では『白湯』と呼ばれていたんですね。だったら商品名にしちゃえばいいじゃないかと。実際『白湯がいい』と言ってくださるお客様が非常に多く、この言葉自体が持つイメージが定着してヒットにつながったと思います」 とはいえ、過去に一度失敗している商品を再販するのは、新商品を出すよりもハードルが高い。「社内で『同じようなものを出しても売れないだろう』と言われますからね。そこで、『白湯の飲用経験率が急増している』『男性にも多く飲まれるようになっている』『白湯は習慣性が高く、週何回以上飲んでいる人たちがいる』といったデータをいくつも積み重ね、それを元に社内を説得して発売にこぎつけました」 昨今の“白湯ブーム”を受け、当然競合他社も増えてくるはずだ。しかし、商品の中身は天然水のため、これ以上手を加えることはできない。『白湯』は非常に“差別化”が難しい商品なのだ。そこで同商品は、2023年9月、ペットボトルのラベルを、通常よりも保温性の高い”保温ラベル”に変更するリニューアルを敢行した。 「中身は天然水なので、冷めてもおいしいというのも強みの商品ですが、やはり温かいうちに飲み切りたいというお客様がたくさんいらっしゃるので、なるべく温かさが長続きする不織布ラベルを採用しました。2022年に『十六茶』で採用したラベルがお客様から好評いただきましたので、それを『白湯』にも使用しています」 結果、冬場のピークを迎える22年12月と23年12月比較で、売上は173%アップ。販売本数は、先月1500万本を突破した。 「もっと手軽に手に取っていただける商品にしたいので、今後は自動販売機や道の駅など色々な所に置いていただけるような取り組みをしたいと思います。今後も、今回のような取材を受けるなど、地道にPR活動を頑張っていきたいと思います」 (取材・文=水野幸則)