【#佐藤優のシン世界地図探索67】不敗の戦友vs引き分けの戦友
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! * * * ――琉球新報の佐藤さんの連載記事(日中韓首脳会談 「非核化」に激高する北朝鮮 佐藤優のウチナー評論)なんですけど、これ、ビビりました。岸田首相も参加した日中韓3国首脳会談の共同声明の中の一文に、北朝鮮が激怒したことにです。 『我々は、地域の平和と安定、朝鮮半島の非核化及び拉致問題についてそれぞれ立場を強調した。我々は、朝鮮半島問題の政治的解決のために引き続き前向きに努力することに合意する』 この中の朝鮮半島の非核化の一文に対して、北朝鮮は中国に激怒。『朝鮮半島における非核化は、力の空白を意味し、戦争の催促を意味する』と5月27日に北朝鮮外務省のスポークスマンが談話で発表しています。 中国が朝鮮半島の非核化について共同声明で言及するなんて、中国がトチ狂ったのでは?と思いました。中国はこんな共同声明になぜ署名したんですか? 佐藤 元々、日米中露韓北の六者協議で、北朝鮮の核問題に関して協議していました。中国もそこで非核化にずっと合意しており、今回の共同声明はその流れです。その先例踏襲でやったということですね。しかし、そうしたら北朝鮮が激怒しました。 ――中国はそれを予測してなかったのですか? 佐藤 予測していなかったと思います。すなわち中国は、現在の北朝鮮の論理をよく理解していないことになりますね。 ――この記事中にこう書いてありました。 『朝鮮半島の非核化で日本や韓国と手を握る中国を、北朝鮮は信頼することができないと思い始めている』 これはヤバいと思います。 佐藤 日本と韓国の外交力が拙(つたな)い。それに尽きます。だから、日本は北朝鮮の問題に関しても、ロシアとも話ができるようにしなければならないんですよ。ロシアが持っている北朝鮮情報を教えてもらわなくてはなりません。 ――確かに。プーチン露大統領は、金総書記に祝電を送っていますもんね。さらに「不敗の戦友関係」とまで言っています。両国は戦友として戦った戦争では負けていませんから。 これからすると、中国は「信頼がなくなってきた、朝鮮戦争当時の引き分けの戦友」。この戦争は38度線で休戦条約が結ばれて現在に至っています。休戦は勝ち負けなしの引き分け。だから「引き分けの戦友」となっています。どうでしょうか? 佐藤 そういうことです。 ――すると、中国は北朝鮮を持て余し始めているのでしょうか?