守護神の涙の訴えから3カ月…「勝ちたい」を表現したSAGA久光スプリングスが地元優勝へ王手【国スポ・バレー成年女子】
国民スポーツ大会(国スポ)は8日、佐賀市のSAGAアリーナなどでバレーボール競技が行われ、成年女子でSVリーグのSAGA久光スプリングスの佐賀が地元優勝に王手をかけた。Vリーグのフォレストリーヴズ熊本のメンバーで構成する熊本との準決勝にセットカウント3―0(25―21、25―14、25―11)でストレート勝ち。昨年の国民体育大会(国体)からの「連覇」と国スポの「初代女王」を懸け、9日の決勝で同じSVリーグの岡山シーガルズ単独チームの岡山と対戦する。 ■新ユニホームで3人娘がかわいい~~ポーズ【写真】 SAGA久光のスターティングメンバー(第1セット)は、中島咲愛(25)、北窓絢音(20)、栄絵里香(33)、吉武美佳(21)、平山詩嫣(23)、荒木彩花(23)、リベロ・西村弥菜美(24)。 守備に徹する役回りから、リベロの西村は「守護神」と呼ばれている。それでも決して「神様」ではない。調子の波はあるし、人前で感情をあらわにすることもある。若手の強化育成を目的に、熊本市で6月末に開催されたV・サマーリーグ西部大会がそうだった。 下位のカテゴリーのチームに立て続けに敗れた後、西村は悔し涙を流した。「シンプルに情けないし、自分のプレーも含めて腹立たしい。今のままだと、またきっと痛い目に遭う」との言葉で危機感を募らせた。 昨季2023~24年シーズンのVリーグプレーオフで勝てずに終戦したのが3月だった。5月の黒鷲旗全日本男女選抜大会では、大学生相手に苦杯をなめた。「この悔しさを忘れない」「次につなげる」―と選手は声をそろえながら、試合でもろさを露呈した。 「技術よりも『勝つ』とか『勝ちたい』という単純なところから足りない。自分が出て活躍するという気持ちを行動やプレーで出していかないと…」。3カ月前のサマーリーグで訴えた、西村の心の叫びは「常勝」の冠を取り戻すための最大のテーマでもあった。 国スポ2戦目。熊本を相手に選手たちは「勝ちたい気持ち」をプレーでこれでもかと表現した。ミドルブロッカーの平山と荒木がアタックとブロックで存在感を示せば、中島はレフト側からの攻撃だけでなく、丁寧なレシーブやつなぎで得点への流れを編み出した。吉武と北窓も競うように両サイドから決定打を繰り出した。そして、堅守で下支えしたのが西村だった。 「拾ってなんぼのポジションなので…」と自身のプレーについては多くを語らない。むしろ冗舌になったのはチームメートのこと。「ブロッカーがいいポジショニングをしてくれたことで、ディフェンスがやりやすく、攻撃へ移行できました」。個人よりもチームを見渡せる思考は、単に今季から副キャプテンの要職に就いたからだけではない。女子日本代表に選出されながら、最終的にパリ五輪で「日の丸」を背負えなかった悔しさもエネルギーになっているに違いない。 「(ストレート勝ちした)この2日間、1セット目の1点目を相手に奪われました。先制された両方とも自分たちのミスでした。それが弱さだと感じているので…」。喜ぶのは試合後の一瞬だけ。西村は、すぐに視線を前に向けた。現状に満足しない姿勢が優勝に王手をかけたチームを引き締める。決勝の相手は同じSVリーグで、粘りに定評のある岡山。SAGA久光の真価が問われるファイナルとなった。(西口憲一) 【#OTTOバレー情報】
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