「大学お笑い」出身芸人の増加で変わる業界勢力図 純粋にお笑いを追求する人が進める健全化
大学のサークルでお笑いをやっているというと、遊び半分の軽いノリだろうと思う人もいるかもしれないが、学生たちは真剣にお笑いに取り組んで芸を磨いている。 今では多くの大学にお笑いサークルがあり、自分たちが主催するライブやコンテストなどを通じて、サークル同士の交流も盛んだ。その中で切磋琢磨することで、必然的に芸のレベルも上がっていく。 私自身も何度か学生芸人のお笑いコンテストの審査員を務めたことがある。大規模な学生お笑いコンテストの決勝に残るような芸人のネタは、本当にクオリティが高くて面白い。
■学生芸人を経ることの強み 学生芸人を経てプロになる人の強みは、豊富な舞台経験を持っていることだ。芸人の芸は現場で磨かれる。生の観客の前でネタを演じて、その反応を見てネタを調整していく。その過程を経て、舞台慣れをしていき、演技力が磨かれ、質の高いネタを作れるようになる。 しかも、そこには同じ学生芸人の仲間がいる。日常的に彼らと情報交換をしたり、ネタの相談をしたりすることで、プロの芸人の疑似体験ができる。プロとしてデビューする前にそれだけの経験を積むことができるメリットは計り知れない。
ただ、そうは言っても芸の道は険しい。お笑いを趣味でやっているアマチュア芸人と、それを生業とするプロの芸人の間には大きな壁がある。学生芸人として活躍していても、プロになった途端に伸び悩んで苦戦するケースもある。 そもそも一昔前までは、大学を出た若者が芸人を目指すこと自体が珍しかった。大卒という立派な学歴を持ちながら、あえて厳しい芸の道に踏み出す彼らは、より意識が高いとも言える。 ■学生芸人の中から未来のスター候補を探す
ディープな野球ファンは、プロ野球だけでなく高校野球や大学野球にも注目していて、そこで未来のスター候補を見つけたりするのを楽しみにしている。 学生芸人の世界でもすでにそういう現象は起こりつつある。学生芸人の面白さに目覚めて、熱心にライブに通うファンもいるし、そこから次の令和ロマンやラランドが出てくるのではないかと期待している人もいる。 お笑い界全体で大学お笑い出身者は増えているし、大卒者の割合も少しずつ増えている。そのことでお笑い界全体の空気も変わっていく可能性がある。