「移転した土地は草だらけ…」 リニアの駅建設遅れて進まないまちづくりにいらだつ住民 周辺の道路も「完成未定」…生活への影響見通せず不安も
リニア中央新幹線長野県駅(仮称)に近い長野県飯田市上郷地区で県飯田建設事務所とJR東海が開いた住民説明会では、県が施工する県駅周辺の道路整備の完成時期が一部未定になったと明らかにされ、JRによる県駅工事の工期延長の具体的影響が見えてきた。駅前広場整備をはじめとするまちづくりや暮らしに与える影響は大きく、住民からは改めていらだちと不安の声が上がった。 【地図】完成予定だった2028年3月時点の未完成区間
長野県が整備の周辺道路、一部が完成時期未定
「大変申し上げにくいのですが、当初予定通りの事業の完成は困難と判断しました」。説明会の冒頭、県飯田建設事務所の担当者が切り出した。県の周辺道路整備のうち、国道153号の4車線化(2・6キロ)と県道市場桜町線の拡幅(1・4キロ)は県駅高架下を通る工事が必要。当初は2028年3月までに全線完成の予定だったが、県駅軌道部分の工期が31年12月末まで5年9カ月延長された影響を受け、リニア本線と交差する部分が完成時期未定と説明された。
2028年に狭い区間残る状態で利用開始に
両道路は市が整備する駅前広場に接し、アクセス道路として重要な役割を担う。市は県駅工事の影響で整備に着手できない区域を除いて、広場の一部利用を28年度から始める方針。ただ28年3月の時点で国道153号には2車線のままの区間、県道には幅の狭い区間が残る状態で利用開始を強いられる。市リニア推進部の小倉博明部長は「広場への出入りがスムーズにできるように、県にしっかりした対応を求めている」と話す。
「分かりやすく説明して」
中央道座光寺スマートインターと県駅を結ぶ新設の座光寺上郷道路も、用地交渉の長期化などで28年3月には途中までの開通にとどまる。出席した上郷地域まちづくり委員会の北原重光会長(68)は取材に「28年までにどういう順序で工事を進めるのか、住民に分かりやすく示してほしい」と求めた。
JR東海や長野県の姿勢ただす意見相次ぐ
説明会ではJRや県の姿勢をただす意見が相次いだ。駅ができる上郷飯沼北条地区の男性は「(JRは)積極的に工事を進めていく姿勢を見せてほしい。何年も前から移転している人がいる」と訴えた。移転を余儀なくされるのは計約190世帯。4年ほど前に移転した人もおり「(土地が)草だらけで放置されている所が多々ある」と指摘した。JRの杉浦禎信・中央新幹線建設部名古屋建設部担当部長は「おわびするしかないが、そういう方々のご協力があって今がある。引き続き全力でやっていく」と釈明した。