軽初の本格2シーター、スズキ「フロンテクーペ」が44.5万円でスタイリッシュにデビュー【今日は何の日?9月18日】
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日は、スズキのスペシャリティカー「フロンテクーペ」が誕生した日だ。「プレリュード」や「シルビア」がけん引した1980年代のスペシャリティカーブームよりも早く、1970年代に軽のスペシャリティカーブームが起こっており、フロンテクーペはその代表的なモデルなのだ。 TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・歴代軽自動車のすべて、360cc軽自動車のすべて ■軽自動車でもスタイリッシュなクーペが登場 スズキ・フロンテクーペの詳しい記事を見る 1971年(昭和46)年9月18日、スズキから軽自動車初の2シータークーペ「フロンテクーペ」がデビューした。高性能エンジンを搭載し、ジウジアーロのデザインをベースにしたスタイリッシュな軽自動車は、キャッチコピー“二人だけのクーペ”で大きな注目を集めた。 スズライトを源流にしたフロンテの足跡 フロンテクーペの源流は、1955年に誕生した日本初の軽乗用車「スズライト」の流れを汲み1962年にデビューした「スズライト・フロンテ」である。 その後1967年には、スズライトの冠が取れた「フロンテ360」が登場。駆動方式をそれまでのFFからRRに変更。軽量ボディと360cc直3空冷2ストロークエンジンを組み合わせた軽快な走りにより、人気モデルとなった。 1960年代末になると軽の高性能化時代が到来、そのきっかけになったのは「ホンダN360」とダイハツ「フェローSS」だった。対抗するように、スズキからは高性能スポーツの「フロンテSS360」が1968年に登場。フロンテSS360は、最高出力が25psから36ps(100ps/L)まで向上し、最高速度は125km/h、0-400m加速は何と19.95秒と軽自動車初の20秒切りを達成した。 小さな軽自動車でも、これだけ走れるということを実証して、軽のモータースポーツブームの火付け役になったのだ。 世界最小の2シータークーペとなったフロンテクーペ 速さを極めたフロンテSS360の流れを汲んだスタイリッシュなクーペとして、1971年のこの日“二人だけのクーペ”のキャッチコピーとともに、フロンテクーペがデビューした。 注目されたのは、イタリア人デザイナーの巨匠、ジウジアーロのデザインをベースにしたスポーティなスタイリング。低いノーズに角型ヘッドライトを組み合わせ、軽自動車の中で最も低いスタイリッシュなフォルムを採用し、軽ながらスペシャルティカーと呼ぶに相応しいモデルだった。 パワートレインは、37psの356cc直3水冷2ストロークエンジンと4速MTの組み合わせ、駆動方式はRR。軽量なボディに加えて前後重量配分が優れていたため、性能は軽の中で際立ち、0-400m加速は19.47秒を記録した。 車両価格は、標準グレードが45.5万円。当時の大卒初任給は、4.2万円(現在は約23万円)程度だったので、単純計算では現在の価値で約249万円に相当する。 今でも軽の名車のひとつとして取り上げられることが多いが、2人乗りのクーペということでターゲットが限られることから、販売は限定的で半年後には4シーターが追加され、2年後には2シーターは廃止された。 1970年代前半に登場した軽のスペシャリティカー スペシャリティカーの定義は曖昧な部分があるが、一般的にはスポーツカーのようなスタイリングで、スポーツカーほどではないが、実用性にも配慮した高性能のクーペスタイルのクルマを指す。乗用車では、トヨタの「セリカ(1970年~)」が火付け役となり、ホンダ「2代目プレリュード(1982年~)」、日産自動車「5代目シルビア(1988年~)」など、1970年代後半から1980年代にかけて一世を風靡したが、実は軽自動車の方が早く1970年代にスペシャリティカーブームが起こっていたのだ。 軽のスペシャリティカーのパイオニアは、1970年に登場した「ホンダZ」とされ、続いたのが軽初の2ドアハードトップのダイハツ「フェローMAX(1970年~)」、ファストバックに仕上げた三菱「ミニカスキッパー(1971年~)」、そして2ドアクーペのスズキ「フロンテクーペ(1971年~)」などだ。 当時はまだ廉価な大衆車が普及し始めた頃、スポーツカーのような高性能モデルは高級品、比較的安価な軽のスペシャリティカーが、走り好きの若者から人気を集めたのだ。 ・・・・・・・・・ 最近の軽自動車は、実用性を重視したハイトワゴン&スーパーハイトワゴンのファミリカーが主流であり、当時のような純粋に運転を楽しむクルマの市場は限定される。1970年代から1980年代にかけては、クルマがスタイリングと性能を追求していた良き時代だったのだ。 今日がなにかの記念日になるかもしれない。
竹村 純
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