兵庫県知事選「大手メディアの敗北」を招いた放送法4条はいま必要か?SNS規制強化より、「政治的公平」の撤廃が筋だ
■ 真偽はともかく「知る権利」に貢献した立花孝志氏 兵庫県知事選挙の開票日に放映された民放の開票速報(フジテレビ系「Mr.サンデー」)の中で、司会の宮根誠司氏が「大手メディアの敗北」と表現したように、既存メディアはいくつもの失敗をしました。 その一つは、斎藤知事のパワハラおねだり疑惑の報道に終始し、斎藤知事最大の失政である公益通報者保護法を巡る法的な問題についてしっかり報じきらなかったことですが、それだけではありません。 もう一つは、斎藤県政の問題点を指摘する告発者、通報者であった元県民局長に服務規律違反があったことについて、報道しない判断をしたことでした。 その話題を回避する様子は誰しもが異常さを感じるレベルでしたが、まさに、そこを突いていったのが斎藤知事候補を応援するとして立候補した「NHKから国民を守る党」の立花孝志氏でした。 立花氏は、既存メディアが報道することを回避したテーマに焦点を当てて、徹底的に情報公開をしていきました。 5月7日に停職3か月の懲戒処分となった元県民局長は、6月14日に設置された百条委員会に出席することなく7月7日自死されたわけですが、非公開となった百条委員会での片山前副知事と奥谷謙一委員長のやりとり(10月25日)などを取り上げ、国民の知る権利に貢献していったのです。 その立花氏が提供した元県民局長の自死に係るストーリーの真偽はともかく、少なくとも既存メディアが権威主義的かつ一方的に作り上げていったストーリーとは真反対のストーリーを一定の証拠を示しながら、県民、有権者に提供していったのです。 こうした取り組みは、YouTubeをはじめとするSNSなくて成立しません。当に、「大手メディアの敗北」(宮根誠司氏)であり「ネットの勝利」と言えるのです。
■ 「言論の自由市場」を信じるしかない 兵庫県知事選挙における「ネットの勝利」を受けて、ネット規制を求める様々な反応が出てきています。 朝日新聞は「選挙と立花氏 言動を看過できない」と題する社説で「誹謗中傷や事実と異なる情報の流通をどう防ぐか。選挙でもネットの力が急速に増しており、それに即した規範作りは喫緊の課題だ」(11月23日)と論じ、毎日新聞は「広告収入など、ネットの伸長で選挙が稼げる『コンテンツ』になっている…ネット選挙のあり方について議論が必要だ」とする政治学者の意見を紹介(11月23日)しています。 ネットで発信を続ける菅野完氏も「視聴者への直接課金のある媒体、あるいは広告料等の間接収入のある媒体での選挙運動禁止の法整備すればいい。YouTubeも広告収入もらってない垢は選挙期間中なに流してもオッケー。広告収入アカウントはダメ。」(11月23日Xポスト)と、印象的な投稿が視聴回数を通じて収益につながる構図を踏まえ、公職選挙法の見直しを通じた規制の導入を提言しています。 しかし、私は、規制を強化する方向よりも、既存メディアとネットメディアとが切磋琢磨し、互いにファクトチェックに取り組むことこそ真の解決の道であると考えています。 今回の問題が深刻化した背景には、既存メディアが元県民局長に服務規律違反があったことを封印するとともに選挙報道に過度に抑制的になったことがあったのですから、その原因となっている放送法4条の規制を撤廃するのです。 米国では、賛否両論ある問題で双方を公平に扱うことを放送局に求める「フェアネス・ドクトリン(公平原則)」が1987年に撤廃され、日本でも、2018年に安倍晋三総理大臣が施政方針演説で「通信と放送が融合する中で、国民の共有財産である電波の有効利用に向けて、大胆な改革を進めてまいります」と表明し放送法4条の撤廃に動きましたが、半年ほどで立ち消えとなった経緯があります。 今回の問題を奇貨として、既存メディアにもっと自由な報道を認め、テレビ放送とネット配信とが互いにファクトチェックをし合い切磋琢磨する、そんな言論空間を目指したいと考えます。 多様なメディアの切磋琢磨を通じて“どちらの言い分が正しいか”を有権者が判断できるようになる。そうした「言論の自由市場」を私たちは信じるしかないのです。 もちろん、情報の発信側にも、そして受信側にも、そうした情報に関するリテラシーを高めていく不断の努力が求められることは、言うまでもありません。
ネット選挙が普及していく中、大手テレビ局等既存メディアについては、要らぬところでの過剰な自己規制や明らかにバランスの悪い偏向報道が目につくようになってきている。 電波放送ネットを規制する方向ではなく、放送法4条「政治的公平性」を撤廃する方向で、大いに議論していきたい。… ― 足立康史 前衆議院議員 (@adachiyasushi) November 18, 2024
足立 康史