母親殺しの少女の無実を証明するために口紅を塗り…西田敏行さんが田舎刑事を演じた『特捜最前線』で魅せた「人情と暴走」
『特捜最前線』における高杉の活躍
10月17日に亡くなられた西田敏行氏、国民的俳優の76歳での死を悼み、『西遊記』『池中玄太80キロ』『釣りバカ日誌』など多くの作品が振り返られた。それらとともに根強い人気を誇ったのが、『特捜最前線』の高杉刑事である。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ…」母の再婚相手から性的虐待を受けた女性 『特捜最前線』は1977年にスタートしたテレビ朝日・東映の刑事ドラマ。10年にわたって人気を博し、『太陽にほえろ!』や『西部警察』のような華やかさはないが社会派志向の幅広い作風が支持を受けた。 警視庁特命捜査課の活躍を描いた本作はエリート刑事の集団を主人公にしており、二谷英明演じる神代課長をはじめ硬派な男が勢ぞろい。そのなかで西田扮する高杉は田舎出身のバイタリティあふれる刑事であり、大滝秀治の当たり役「おやじさん」こと船村刑事とともに庶民としての異彩を放った。 本人の人気が高まるにつれて出番が減っていき、2年で惜しくもレギュラーから降板した西田敏行だが、『特捜最前線』における高杉の活躍を紹介していこう。
第7話「愛の刑事魂」
(脚本:長坂秀佳/監督:村山三男) 高利貸しが殺され、それを目撃した幼い少女が連れ去られた。両親は工場勤めの貧しい暮らしで、特命課の聞き込みに娘の写真が1枚もないことを明かす。ゆえに捜査は難航、しかも父母ともに娘が行方不明にもかかわらず仕事を続け……それらを訝しむ桜井刑事(藤岡弘、)に対し、高杉は真っ向から反論する。 「育ちのいいあんたには、わかんないかもしれませんね」 みずからも東北の子だくさん貧乏農家に生まれたことを語る高杉、福島県出身という西田敏行のパーソナリティが反映された役であり、方言の訛りを生かした熱いセリフが胸を打つ。 特命課のチームワークによって、犯人は逮捕されるが、少女は行方不明のまま。なぜか高杉も姿を消していたが、絶妙なタイミングで人懐っこい笑顔とともに再登場――「田舎刑事人情派」とでも言いたくなる真骨頂がそこにある。 この「愛の刑事魂」は、本来『特捜最前線』の立ち上げ用に作られたエピソードであり、レギュラー刑事それぞれの個性が端的に表現された。しかし「地味」という理由で7話目に回され、やがてそうした世界観こそが本作特有の持ち味となっていく。
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