母親殺しの少女の無実を証明するために口紅を塗り…西田敏行さんが田舎刑事を演じた『特捜最前線』で魅せた「人情と暴走」
第105話「さようなら、高杉刑事!」
(脚本:長坂秀佳/監督:天野利彦) 西田敏行の『特捜最前線』ラスト回。 母親殺しを自白した少女(森下愛子)の無実を証明するため、高杉による孤立無援の奮闘が描かれる。少女を化粧品店に連行し、みずから口紅を差し、アイシャドウを塗りたくりながら説教するシーンは、おかしみと迫力が相まって本エピソードの白眉だ。 少女が目撃してしまった母親の「行為」をめぐる謎解きも見事で、のちに小説『浅草エノケン一座の嵐』で江戸川乱歩賞を受賞する長坂秀佳の手つきはあざやか。所轄署への栄転が決まった高杉だが、特命課での別れも「泣き」ではなく「笑い」で締めくくり、ゆえに見るものの涙をさそう。 レギュラー降板にあたっては殉職案もあったが、西田の「いつでも戻ってこられるように」という意向で転属に。その言葉どおり、5年後の第351話「津上刑事の遺言」において高杉は再登場し、ファンを沸かせた。多くは語らないが、これまた『特捜最前線』屈指の傑作回であり、ぜひご覧いただきたい。 ここまで紹介した4エピソードはすべてDVD化されており、2024年10月現在Amazon Prime Videoの東映オンデマンドでも配信中だ。そのほか、塙五郎脚本の「緊急手配・悪女からのリクエスト!」「記憶のない毒殺魔!」も高杉メイン回として見ごたえがあり、来春からはデアゴスティーニによる『特捜最前線』DVDマガジンの全国販売が予定されている。 愛と死と憎悪が渦巻くメカニカルタウン――この機会に特命課の活躍を見てみてはいかがだろうか。さようなら、そしてありがとう、高杉刑事!
高鳥 都(ライター)
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