夫の死去から5年…60歳シニア女性「再婚したい相手ができました。年金や相続にまつわる注意点を教えてください」【FPが解説】
人生後半、配偶者と離別・死別する方は増加しており、それに伴ってシニア層の再婚が増えています。しかし、そこには未来の相続をはじめ、多くの課題・問題が生じてくるため、注意が必要です。今回は、女性の視点から確認します。FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
増加する「シニア再婚」だが…女性側が確認すべき重要事項
55歳で夫を亡くして5年。私には子どももいないため、このさき一生ひとりなのだと思いながら暮らしてきましたが、最近、再婚を考える相手ができました。高齢になってからの再婚について、注意点を教えてください。 60歳パート・女性(埼玉県・和光市) 厚生労働省によれば、結婚した夫婦の4組に1組は再婚で、とくに近年は相談者のように、シニア層の再婚件数が増加傾向にあります。世代別の再婚件数をみると、50代以上の比率は夫が約3割、妻が約2割にも上ります。 しかし一方で、シニアでの再婚となると、年金や、今後起こる相続の問題も事前に考えておく必要があります。 ◆公的年金(1)…再婚相手は厚生年金? それとも国民年金? 結婚する前、お相手の財産の状況を確認が必要なのはどの世代でも同様です。貯蓄や収入、借金、生命保険の加入状況、住まいは持ち家か賃貸か、といったことは確認しましょう。 シニアの場合は、それに加えて年金の確認も重要です。国民年金と厚生年金の違いは大きく、厚生年金も現役時代の収入によっても額が変わってきます。 相手の方の公的年金の金額を確認するには、すでに公的年金を受け取っているのであれば、受給額を直接聞くしかありません。受給開始前なら「ねんきん定期便」を見せてもらうことで、おおよその金額を把握することができます。 また、亡くなったご主人の遺族厚生年金を受け取っている女性が再婚する場合は注意が必要です。毎月5万~10万円の遺族厚生年金を受給しているはずですが、再婚すれば受給権が消滅します。 さらに、40歳から65歳であれば、中高齢寡婦加算として毎月5万円も上乗せされていますが、これも同じように受給ができなくなります。 ほかにも、夫が厚生年金に加入しており、女性が65歳になるまでに再婚すれば、夫の老齢厚生年金に加給年金が上乗せされる可能性があります。加給年金は、厚生年金に加入していた人に、65歳未満の配偶者がいれば、年間約40万円を加算する制度です。 ◆公的年金(2)…前妻との年金分割の有無 また、再婚相手が、前配偶者と死別ではなく離別している場合、年金分割をしているかどうかの確認が必要となります。 年金分割とは、婚姻期間の厚生年金を離婚後に夫婦で分け合う制度です。夫が妻に渡すことが多く、金額としては平均月3万円程度です。この額の分、離婚した夫の年金の受給額は減ることになります。その一方で、年金分割を受けていた妻は、ほかの男性と再婚しても受け取ることができます。 ◆健康保険…相手男性が会社員なら、被扶養者となり保険料もゼロに 自分が国民健康保険に加入していて、再婚の際に相手が会社勤めを続けていれば、配偶者として健康保険の被扶養者となり、健康保険料はゼロになります。 また、高齢になるにつれて心配になるのが、病気や介護の問題です。 持病がある場合は、事前に相手に伝えておく必要があります。介護についても、介護が必要になった場合にどのような介護を望むか、事前に話し合って決めておきましょう。 介護費用は、在宅介護で毎月5万円、有料老人ホームなどの施設介護となれば、毎月15万円くらいかかるため、財産の状況も併せて、よく検討する必要があります。