親の財布から子どもがお金を盗んだら...子育ての博士が「叱らず、励ます」を選ぶ理由
多くの親が子育ての中で悩むのが、「子どもの叱り方」です。 ドロシー・ロー・ノルトさんによる詩、「子は親の鏡」には、「叱りつけてばかりいると、子どもは『自分は悪い子なんだ』と思ってしまう」という一文があります。 【写真】2005年に日本を訪れた際のドロシー・ロー・ノルトさん 必要なことはきっぱりと伝えつつ、必要以上に叱りすぎないためのコツはあるのでしょうか。たとえば、親の財布からお金を抜いてしまった子に対して、親がとるべき態度とは? ドロシーさん流の叱り方のコツを、詩をより掘り下げた著書、『子どもが育つ魔法の言葉』より抜粋してご紹介します。 ※本稿は、ドロシー・ロー・ノルト著、レイチャル・ハリス著、石井千春訳『子どもが育つ魔法の言葉』(PHP研究所)から一部抜粋・編集したものです。
叱りつけてばかりいると、子どもは「自分は悪い子なんだ」と思ってしまう
子育てをしていくうえで、子どもに善悪の判断を教えることは、とても大切なことです。善悪の判断を学ぶことは、わたしたち人間にとって、一生とまではいかなくても、長い時間のかかることだからです。 人のおもちゃを横取りしてはいけない、お菓子を買ったらお金を払わなくてはいけない、カンニングは悪いことだ……子どもへの躾は、最初はそんなことから始まります。そして、子どもが成長するにしたがって、もっと複雑な道徳的問題にも触れることになります。……嘘をついてもいいのか、友だちの不正を見つけたらどうしたらいいのか。そんな問題を、子どもに考えさせてゆくことになるのです。何が正しくて、何が間違っているかを判断する力は、人が一生かけて培ってゆくものです。子どもは、親とともに、その長い道のりの最初の一歩を踏み出すのです。 では、どうやって、子どもに正邪の基準を教えたらいいのでしょうか。親の姿を見習って、よい子に育ってほしいと親は願うものです。しかし、子どもが実際に悪いことをしてしまったときには、どう対処すればいいのでしょうか。たとえば、誰かを傷つけたり、わざと物を壊したりしたときにはどうしたらいいのでしょうか。 まず、「そんなことになると分かっていたら、許さなかった」と、子どもにきっぱり言うべきなのです。そして、なぜそんなことになってしまったのかを考えさせ、自分の行為を恥じさせ、反省させなくてはなりません。ときには、同じ失敗を繰り返さないように罰を与えることも必要でしょう。 けれど、子どもが必要以上に自分のことを恥じないように、また無益なコンプレックスを抱かないように注意する必要があります。子どもを責め、厳しく叱りすぎると、子どもは自信を失い、自分をだめな人間だと思うようになってしまいます。あまりにも厳しく子どもに接するのはよくないことです。厳しい罰を与えるよりも、子どもを支え、励ましたほうが、子どもはよく学ぶものなのです。 ほとんどの場合、子どもは、自分では意識せずに悪いことをしてしまうものです。たとえば、ほかの子から思わずおもちゃを取り上げてしまったり、台所を散らかしてしまったり、無断で人の物を使ったり……。こんなときは、親は、なぜそれがよくないことなのか、どうやって責任を取ったらよいのかを教えなくてはなりません。