「エネルギー大国」ロシアの先行きに暗雲、プーチンの取り巻きらが離反
ダムが決壊し始めるかもしれない
ダムが決壊し始めるかもしれない。ここ数カ月、ウラジーミル・リシンやアルバート・アブドリアンといったプーチンの取り巻きたちが初めてプーチンと決別した。持っていたロシア企業の株を数年前から密かに売却していたイーゴリ・ローテンベルグは最近、ロシア国内に持つ株をすべて手放した。 これは重大な動きだ。というのも、欧州連合(EU)の制裁対象となっているローテンベルグはかつて、国営ガス独占企業ガスプロムから受注していた石油・ガス掘削会社ガスプロム・ブレニエの主要な受益者の1人だったからだ。ローテンベルグは2023年12月に、ロシア国内に持つ最後の大型資産だったRTITS(正式名称はRTインベスト・トランスポート・システムズ)の株式を売却した。かつて推定資産15億ドル(約2220億円)とされていたローテンベルグは、ロシアのウクライナ侵攻を受けて2022年に英国から制裁を受けた。 イーゴリ・ローテンベルグはプーチンの柔道仲間であるサンクトペテルブルク出身のアルカディ・ローテンベルグの息子だ。アルカディは40億ドルもの資産を持ち、フォーブスの世界富豪リストの781位にランクインしている。父親がプーチンと近しい間柄であるにもかかわらず、イーゴリは国内の政治やプーチン政権から距離を置いている。 こうした事態は、西側諸国がロシアのオリガルヒらの資産追跡と差し押さえに一層積極的に動いている中でのものだ。米財務省外国資産管理局(OFAC)は9月20日、オリガルヒ7人と、これらオリガルヒが支配する12社を資産凍結の対象に指定した。 イーゴリ・ローテンベルグの全株式の売却や、オレグ・デリパスカの最近の反戦発言は、安全保障や軍事に関与していない者、あるいはプーチンの側近ではない者としてロシアで最も権力を持つ人々の間で不安が高まっている証拠かもしれない。 経済制裁を受けているにもかかわらず、プーチンが世界のエネルギー大国という座を維持し続けるつもりであることは明らかだが、過去30年間ロシアのエネルギー産業を率いてきた著名な実業家たちの支援はもうない。
Daniel Markind