「エネルギー大国」ロシアの先行きに暗雲、プーチンの取り巻きらが離反
ウクライナでの戦争が始まって3度目の冬を迎えようとしている今、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は多くの面で動きが取れない状況にあることに気づいている。ウクライナに全面侵攻して2年半の間、プーチンはロシア経済の崩壊を回避するために莫大なエネルギー資源を利用した。だが今、エネルギー企業の一部のトップらがプーチン政権から距離を置くことを決め、石油と天然ガスがもたらす恩恵だけではロシア経済を浮揚させることはできないかもしれない。 非常に複雑なロシアの政治の世界でプーチンが長く権力を維持している秘密の1つは、オリガルヒ(新興財閥)と呼ばれるひと握りの富豪たちとの強力なつながりだ。これらの富豪にはボリス・エリツィン元大統領の盟友もいれば、2000年にエリツィンの後を継いだプーチンとともに頭角を現した者もいる。 第一世代のオリガルヒたちはコネを利用して1990年代にエネルギー産業などの旧ソ連時代の国有資産を格安で購入した。「プーチンのオリガルヒ」たちは2000年代以降、コネで国との巨額の契約を獲得。「エリツィンのオリガルヒ」らはロシアの天然資源を実質的に支配するようになった。超えてはいけない一線を意図せず超えたり、プーチンの機嫌を損ねたりした者は、プーチンのターゲットになる可能性があった。 エリツィン時代のオリガルヒたちがプーチンに潜在的な脅威を与えていたにもかかわらず、プーチンはしばしばオリガルヒらと対立するのではなく、政治に関与しない限り金や資産を持っていられるとさやき、むしろ取り込むことを選んだ。これによって、オリガルヒらはプーチン政権に一枚噛むことになり、プーチンに逆らうことを選んだ人々には相当な罰が科されることになった。プーチンは、反旗を翻した元石油王ミハイル・ホドルコフスキーを2003年から9年間投獄し、自身に逆らえば非情な手段を取ることを見せつけた。 プーチンに歯向かう者は20年間ほとんどいなかった。だが2022年2月のウクライナへの大規模な侵攻で状況は変わった。西側諸国はロシア政府の資産だけでなく、多くのオリガルヒの財産も制裁対象とし、プーチンに何らかの影響力を行使して戦争を止めるよう仕向けた。 フランスのリゾート地のリビエラで休暇を過ごし、所有する巨大なヨットで豪華なパーティーを開くことに慣れていたオリガルヒらは、制裁でそうした贅沢な暮らしができなくなった。多くの欧米諸国への渡航が禁止されただけでなく、ヨットやその他の所有物が差し押さえられることも多かった。その結果、差し押さえられた資産は法的に宙に浮いたままになっている。