新国家資格「動物看護師」 獣医診療補助の力に 始動1年半、静岡県内でも取得広がる
獣医師の診療を補助する国家資格「愛玩動物看護師」が始動して1年半が経過し、静岡県内でも動物看護師が新たな資格を手に活躍している。採血や心肺蘇生など可能な業務の幅が広がり、動物病院ではチームによる獣医療の充実や看護師の意欲向上につながるなどの変化が見え始めた。 ■業務の幅、専門性、意欲向上 専門診療に力を入れる浜松市中央区の浜松どうぶつ医療センターは、愛玩動物看護師17人が循環器、整形、歯科など各診療チームに所属し、専門性を高めている。不妊・去勢などの腹腔(ふくくう)鏡手術では動物看護師のリーダーの一人、花島璃帆さん(29)が器具を準備し、術中は腹部に入れたカメラを持つなど助手として医師がスムーズに治療できるようテキパキと取り組む。 「責任感が増し、今まで以上に自分ができることを先にやろうという意識に変わった」。花島さんは、社会的役割の確立で自身の変化を実感する。これまでも獣医療を担う一員として関わってきたが「採血ができないなど歯がゆく思うことがあった」と打ち明ける。 愛玩動物看護師は2023年2月の第1回試験以降に誕生し、現在の登録者は全国で2万1700人を超える。獣医師の指示の下で診療の補助が認められ、従来と同様に入院動物の世話や飼い主への飼養指導などを行う。獣医療の高度化・多様化が進み、動物を介在した介護や教育などに関する活動の社会的意義も増す中で、獣医療提供体制の整備や動物看護師による活動の充実が求められている。 同センターの舘沢仁総院長は、愛玩動物看護師の活躍によって「獣医師が飼い主と話す時間や治療方法を考える時間が増えたことが非常に大きい」と語る。専門治療を求める飼い主の需要が高まる中で、木俣新代表は「獣医療を深掘りすることで救える命は増える」と強調する。多忙な獣医師の労働時間も緩和されてきているという。 同センターでは毎月、獣医師が動物看護師に疾患や症状の着眼点などについて解説する勉強会を開いている。花島さんは「看護師だからこそ見つけられる動物の変化もある。気づくには知識と経験が必要」と専門性を追究し続ける。 県獣医師会の杉山和寿会長は「獣医師との視点の違いを上手に融合すれば、きめ細やかな獣医療が提供できる。タスクシェアによってこれまで以上に組織内の情報共有が重要になる」と話す。
静岡新聞社