「そのままできたら生き残れる可能性あるぞ」元ゾフィー・上田が語る、全米進出を目指したきっかけ
そこで1個活路を見いだしたんですよね、もしかしたらイケるかもわかんないって
――約2年前の取材で「オンライン英会話を習ってる」とおっしゃっていましたが、アメリカ進出を意識してから始めたんですか? 上田:「何とか生き残るために」っていうのがデカいかもしれないですね。「どうしたら自分がやりたいことで飯食えんのかな」と思っていろいろ調べたんですけど、日本の枠組みだけで考えてみたらもう“詰んでた”っていうか。 テレビをどう頑張っても自分が生き残ってるところがまったく想像できなくて。「コントだけで食えるようになる!」ってずっとジタバタもがいてきたけど「あ、やべ、これもう無理かも……」ってトコまでかなり追い詰められちゃって。数年くらい悶絶してました。 「完全に詰んでるな」と思ってたら、アメリカで暮らしてるアニメーターの人から「こっちではコメディ作ってるだけで飯食えてる人たくさんいるよ」って聞いて驚いて。だから、「え? 作ってるだけで生活できるの? 僕無限に作れます! 行きたいです!」って感じになりました(笑)。 とにかく僕はネタ作るのが好きなんですけど、いろんな先輩から「ネタだけじゃ無理だよ」ってずっと言われてきて。「それが現実だよな」って漠然と思ってたんです。でも、さっき言ったアニメーターの人から「ネタが面白くて生活できるならそれが一番いいのに。何でやんないんですか?」って言われて「たしかに」としか返せなかった。そこで1個活路を見いだしたんですよね、もしかしたらイケるかもわかんないって。 ――作家なり演出家なり日本で生き残る道はあるはずなのに、「ネタだけで生活したいからアメリカに行く」っていうのがすごく上田さんらしいなと思いました。 上田:ただの“目立ちたがり”なんじゃないですか。常に「ほかの人がやってないこと」を探すタイプというか。たとえば賞レースでもお客さんとして予選を観に行って「こういう人たちが受かる。この人たちは落ちてる」みたいなデータを取るのが大好きなんですよ。 たとえばボケ数を増やしたほうがウケた回数で評価につながると思ったけど、意外と比例してないってことに気付いたときがあって。むしろ、ネタの一発目の笑いがめちゃくちゃデカかったら、後半はぜんぜん笑いとれてなくても受かってる。 ジャッジしてるのが作家の人だから、「この発想なかったわ」と思わせることができれば、後半はウケてなくても「オモロかった」になるんだと気付いたんです。それで一発目の印象をいかに強くするかを考えて、「普通の芸人さんは最初のボケまで10秒ぐらいだけど、俺らは短くても30秒とろう」みたいな戦略で臨んだんですよ。 そんなふうに人と違うことを見つけてやってきたから、平場もすごい強いわけじゃないし、食リポもできるわけじゃないし、大喜利も強いわけじゃない僕が生き残るには、誰も通ってないオフロードを突っ走るしかない。 「コント好きだからこれは一生やり続けるとして、じゃあ俺はどの道を行く?」って冷静に考えたら、草ボーボーのところを通るしかない(笑)。もっと才能があったら人間の道を歩けるんでしょうけど、僕は森の中に入っていくしかないんですよね。もちろん自分なりにデータを集めて少ないなりに勝算あっての森です。