茶番だった新ポスティングシステム
田中将大がヤンキースと契約して数日後のこと。ボストン・グローブ紙のニック・カーファード記者が、最後まで田中獲得を目指した6チームの最終的な提示金額はだいたい以下の通りだったと、あるGM(ゼネラルマネージャー)に聞いた話として伝えた。 広島・前田智徳 チンタラした態度 ”誤解を与えていた” ■最大で5500万ドルの提示額の開き ・ヤンキース :1億5500万ドル ・カブス :1億2000万ドル ・ダイヤモンドバックス:1億2000万ドル ・ドジャース :1億1900万ドル ・ホワイトソックス :1億ドル ・アストロズ :1億ドル 年数やオプトアウト(途中で契約破棄できる権利)の有無は明らかではないが、総額においては5500万ドルの開き。やはり最後はヤンキースが、他が届かないところまで値段をつり上げ、振り切った。 レッドソックスのラリー・ルキーノCEO(最高経営責任者)曰く、「今までにも見たことがある」。金に糸目に点けないやり方は、いかにもヤンキースらしいと言いたげだった。 ■ヤンキースを標的とした入札制度 ただ今回、ヤンキースにも誤算はあった。彼らとしては、今季のチーム総年俸をぜいたく税の支払い義務が生じる1億8900万ドル以下に抑えるつもりでいた。そのため当初は、ぜいたく税のかからない入札金で他を圧倒して独占交渉権を得てから、今季のチーム総年俸が1億8900万ドルを下回る範囲での契約をイメージしていたのである。 その目論みは、昨年11月にオーランドで行なわれたオーナー会議で、パイレーツのオーナーらが、「入札金にもぜいたく税を課すべきだ」と訴え、日米で合意目前だった新ポスティング制度案に異を唱えたことで崩れた。結果、入札金に上限を設けることが決まり、それが2000万ドルと比較的低いことから、契約総額の大半が、ぜいたく税の対象となるという、半ばヤンキースを標的としたような制度が、成立してしまったのだった。