茶番だった新ポスティングシステム
■茶番だった”全チーム”の入札 実際、ヤンキースの今季総年俸は、1億8900万ドルを越えることが確実。その意味では、新制度の一つの目的が、達成されたといえるのかもしれない。だが、新制度においてもう一つの謳い文句だった、「入札額の上限が低めに設定してあることから、全チームが入札し、さらには契約のチャンスがある」は、全くの茶番となった。最後は1億ドルを優に超える勝負となったのだから。 結果を受け、ある大リーグ機構のトップは、「ESPN.COM」のジェリー・クラズネック記者の取材に対し、「時代の流れに逆行する結果を招いてしまった」と残念そうに話したそうだ。 2011年に締結された労使協定において、ドラフトの契約額に上限が設けられ、それを越えた場合には、来年の指名権を剥奪するなど、罰則が設けられた。また、ドミニカ共和国やベネズエラの若い選手と契約する場合の契約額にも上限を設け、越えた場合はやはり、ペナルティが課されることになった。 ■資金力のないチームは勝負できない いずれも契約金の抑制と戦力の均衡が目的で、資金力のないチームに配慮されている。今回の新制度でも、入札額に上限を設けた結果、年俸は上がるが、ぜいたく税が年俸高騰の抑止力となり、高騰は避けられる。よって、資金力のないチームも十分に勝負できる――というシナリオを描いたわけが、絵に描いた餅となったのだ。 そのリーグトップの人物は、早くも危惧を口にしていた。 「どのチームにもチャンスがあるなんて、まるで、ジョークだ。結果、年俸の高騰に拍車がかかるだろう」 その懸念が現実となるまでに、さほど時間はかかっていない。田中とヤンキースの契約が発表された数日後、マット・ガーザ投手がオプションなどを含めると、5年、6700万ドルでブルーワーズと契約を交わしている。 本人は5年総額7500万ドルを狙っていたが、過去2シーズンは24回しか先発していないこと、肘の故障歴があることなどから、どのチームも長期高額契約には慎重だったが、最終的には本人の希望に近い額で落ち着いた。