2度の「震度7」や届かない物資……熊本地震の教訓「7つの備え」(上)
【2】「1週間分」の備蓄品を本気でそろえる
命が助かっても、被災直後には水や食料の不足が襲います。熊本でも東日本や阪神・淡路同様、避難先でおにぎり1個で1日をしのいだり、飲み水にも苦労したりする状況が伝わってきました。 自治体も備蓄を進め、災害時に他の自治体やスーパーと物資供給の協定を結ぶことが多くなっています。それでも最初の数日間は、物流の寸断や人手不足などで「物資はあっても届かない」ことを覚悟しなければなりません。やはり「自ら備える」に越したことはないでしょう。 自治体が推奨する備蓄品はさまざまで、備蓄量も3日分や1週間分などと幅があります。しかし、今回は熊本市内で1週間たっても「水がない」と民間の物資拠点に駆け込んでくる人たちが多くいて、その場にいた私はまとめて持っていた体ふきやドライシャンプーなどを提供し、喜ばれました。また、益城町ではコンビニの駐車場の隅に「1週間、泊まり込んでいます」という幼児連れの家族がおり、私は手元にあった最後の水を提供しました。どの状況も道路から水があふれそうなほど大雨が降っていたり、コンビニは営業を再開していたり、あるいは水道は通っても濁っていたり。災害はこうした皮肉や「まさか」の連続です。こうした教訓からも、備蓄品は最低1週間分を本気でそろえてみる、少なくとも自分や家族のために何がどれくらい必要かをシミュレーションしてみていいのではないでしょうか。 そんな大量のモノを家に備蓄しておけるか、心配する人も多いでしょう。しかし最近は、災害用に特別なものを用意するのではなく、普段から食料や日用品を少し多めに購入し、消費しながら蓄えておく「日常備蓄」という考え方が提案されています。「ローリングストック法」とも呼ばれ、NPOや民間企業がそれに対応した詰め合わせ商品などを開発していますので、実際に試しながら理解、工夫してみてはどうでしょうか。
【3】ネットを駆使し、紙でも伝達
モノと同じくらい重要なのは「情報」。テレビや新聞、ラジオに加えてインターネットが発達した現代、情報はときに生命線にもなり得ます。 今回、大量に飛び交った不確かでネガティブな情報への対処は別項で。ここでは事前に確認しておきたい有用な情報について述べます。 ネットを使いこなせる人は、防災科学研究所が開発した「地震ハザードステーションJ-SHIS」をパソコンで開いてみることをおすすめします。全国地震動予測地図をベースに、主要活断層帯や表層地盤、深部地盤、地すべりの恐れのある地形などを重ねあわせて見られる公開のデータベースです。 「今後30年で震度6強以上の揺れに見舞われる確率」などの予測を約250メートル四方のメッシュで色分けしており、水色から濃い赤になるほど確率が高い、つまり揺れやすい場所であると分かります。ちなみに熊本市南東部や益城町は比較的濃い赤の部分が目立ちますが、西原村や南阿蘇村などは3%以下のかなり低い確率の色分けに入っていました。専門用語も多いので、解説を見ながら自分の住む地域の情報を読み取ってみましょう。 国土交通省も防災情報を「重ねるハザードマップ」として、ネットで公開しています。地震だけでなく洪水や土砂災害、火山情報も。最近はドローンを活用した動画も積極的にアップされ、南阿蘇村の土砂崩落現場も手に取るように見られる時代となりました。これらの情報をどう実際の防災に生かすかが問われるでしょう。