2度の「震度7」や届かない物資……熊本地震の教訓「7つの備え」(上)
「震度7」が熊本県を直撃した熊本地震の発生から半月。大分県を含む九州各地では今も余震が続き、数万人の避難者が不安な日々を過ごしています。一方、次の災害はどこで起こるか分かりません。今回の震災は都市部にも山間部にも、さまざまな課題や教訓を突き付けています。現場で目の当たりにした被害や被災者の生の声、そして専門家の意見に学び、熊本の人たちと気持ちをともにするという観点で「今すべき備え」を7つにまとめてみました。(関口威人/Newzdrive) 【写真】続く余震「車中泊」の悲劇どう対応? 熊本地震の教訓「7つの備え」(下)
【1】耐震化をイチから総点検
「あの建物もこの建物も、2回目の地震で崩れていった」「1回目で少し被害があったから、2回目は警戒できた。逆に1回目で大丈夫だと思っていたら危なかった」 今回、最大の被災地の一つとなった熊本県益城町周辺では、「2度の震度7」をめぐってさまざまな体験や教訓が語られていました。 毎日新聞によれば、この地震で死亡した人が発見された倒壊家屋やアパートで、建築時期を確認できた25棟のうち、建築基準法の新耐震基準(1981年6月)以前に建てられたのは23棟。朝日新聞は、家屋倒壊で死亡した37人中、少なくとも20人のいた家屋が新耐震基準前の建築だったと報じています。また、被災建物に対する「応急危険度判定」で「危険」と判定されたのは熊本市内が17%であるのに対し、益城町は40%、西原村50%、南阿蘇村49%(4月29日までの熊本県まとめ)など、古い建物が多い地域で割合が如実に高くなっていることが分かります。新耐震基準前の建物の補強や建て替えが急務であることは疑いありません。その上で、新基準であってもあらためて検証が求められます。 「現行の耐震設計、耐震診断では、震度6強を越えるような大きな揺れを2回以上、かつほぼ連続して経験することは想定していません」と明かすのは耐震工学が専門で、今回も益城町などへ現地調査入りした名古屋大学減災連携研究センターの護雅史特任教授です。 「16日の『本震』の前までは、比較的新しい木造家屋には少なくとも外観上、構造の致命的な被害は少なかったように感じられました。しかし残念なことに、この時点では益城町を含めてほとんどの被災地で応急危険度判定が実施されていませんでした。もしできていれば、危険な建物に近づくことなく、守られた命があったかもしれません。今後はモニタリングによる迅速な自動応急危険度判定のシステム開発や体制づくりが望まれます」 そして護特任教授は「この地震を目の当たりにして、建物の耐震化の重要性をあらためて痛感しました。少なくとも災害時の重要拠点は2度の大地震を受けても機能を保持できるだけの耐震性を付与させるなど、南海トラフ巨大地震を控えた今、建物の耐震性能のあり方を根本的に考え直すべきでしょう」と訴えます。 耐震診断については自治体それぞれに助成制度や手続きがありますので、まずは窓口に確認してみましょう。