「やってもうたと思ったんですが」 矢野燿大氏が語る"キャッチャー論" 「ウィリアムスに教えられた試合中のふるまい」とは
現役時代は中日・阪神で活躍、2019年シーズンから4季にわたって阪神で1軍監督を務めた矢野燿大氏が、スポーツアンカー・田中大貴氏のYouTubeチャンネル「アスリートチャンネル」にゲスト出演。 【動画】佐藤が巨人エースの戸郷を打ち砕いた逆転の11号3ランシーン 自身の持つキャッチャー論について述べた。 まず近年、野球界ではキャッチャーとして入団しながらも、別のポジションにコンバートし活躍を続ける選手が目立つ。現役ではホークス・近藤健介や栗原陵矢、少しさかのぼると小笠原道大や和田浩一らがその代表格だろう。 だが、矢野氏いわく、それはキャッチャーが決して簡単に応用の効くポジションというわけではなく打力が備わってこそのコンバート成功なのだという。一方で、キャッチャー経験があるがゆえの利点もあるといい、「1人だけ他の選手とは反対方向をむいてプレーをする。それはバッティングに活かせる部分はある」と視野が広がることは大きなメリットとした。 現役時代は堅守と卓越したリードで阪神の2度のリーグ優勝に貢献した立役者の1人。引退後もコーチ、監督として多くの選手を指導してきた。 そんな矢野氏の"キャッチャー育成論"とはどのようなものなのだろうか。同氏が口にしたのは「プロ・子ども問わず、顔をあげるということ」という非常にシンプルとも思えることだった。 捕手が扇の要といわれるのは守っているナイン全員から顔を見られ、全体を把握できることにもある。そのため、ミスをした際や劣勢の場面で俯いてしまうと、チーム全体に負の雰囲気を与えてしまうことに繋がってしまうというのだ。 そのため、自身が指導していた際にも、意識的に声を出し、顔をあげることを意識的させるよう声をかけていたという。 さらに矢野氏は、試合中のふるまいについても言及。当初は、キャッチャーとして最後まで何があるかもわからないことで、試合途中で喜びをあらわにすることは良くないと感じていたが、自身の考えを変える出来事があったという。 「ある時、ピンチを抑えた際に7回に『よっしゃー!』とガッツポーズをしてしまった。ベンチに戻って、『やってもうた』と思ってたんですが、その時、ウィリアムスに『お前のガッツポーズ嬉しかった』と言われて。喜んでいいんだと思いましたね」とポジティブな反応だと、好循環を生むことに気づいたと明かした。ジェフ・ウィリアムスといえば「JFK」として、藤川球児、久保田智之とともに阪神のリーグ優勝に貢献した、鉄壁のリリーフ陣で知られる。その一人から言われた言葉が自身の捕手観に影響を与えたという。 その後、矢野氏は捕手としてマスクをかぶって、投手が抑えた際には喜びを共有する手段として、ガッツポーズを用いるようになったとした。 その後、阪神監督時代にも「矢野ガッツ」として、ガッツポーズが選手のやる気を引き出すモチベーターとしても評価されたが、選手時代の原体験が生きているようだ。 [文/構成:ココカラネクスト編集部]