「御社の課題は何ですか」はまるでダメ…ビジネスの提案がうまい人が"あえて相手にぶつける質問"
■小さな決断を積み重ねてゴールに近づく もう一つ大事なポイントがあります。大きな決断の手前に、そこに続く小さな決断を積み重ねていくことです。提案を受ける側は、決断という大きな負担を抱えています。スムーズに進めるには、一貫した小さな決断を積み重ね、ゴールへと近づいていくことです。 『影響力の武器』の著者であるロバート・B・チャルディーニは、人が説得されやすくなるための原則を示しました。その中でも特に「一貫性の原則」は、よりよい提案のために一読の価値があります。 人には、一度決定したことに対して自らの行動を一貫させようとする心理が働きます。「現状の課題は何ですか」と聞かれて「施策の費用対効果が低い」と答えたとします。すると、その場で費用対効果に優れたプランを提案されると、その案の長所が一層際立って見えてくるのです。 いきなり提案に対して決断を仰ぐのではなく、その手前で小さなハードルを越えていく。提案の全体まるごと決めてもらおうとせず、気に入った部分を選んでもらったり、もし実施するとなったら心配になる部分をピックアップしてもらったりする。一見すると手間を増やしているだけのようなこのプロセスが、実はゴールへの近道なのです。 ■「絶対」「100%」「ベスト」「最高の」はNG 【損】この企画は絶対に成功します→【得】我々はこんな未来を思い描いています 押し付けは、たいてい反発を招きます。押さえ付けたボールが大きく跳ねるようなものです。「この企画は絶対に成功します」という伝え方では、「絶対」という言葉が、まず間違いない! というあなたの主観の押し付けになっています。他には「100%」「ベスト」「最高の」「この案以外ない」などもそうです。これらを大袈裟ワードと呼んでいます。そもそも、成功を保証することは非常に難しいものです。 「絶対は絶対にない」という言葉を遺したのは織田信長ですが、リーダーならどこかの場面で断定的な大袈裟ワードを用い、メンバーを鼓舞する必要があるかもしれません。ですが今は提案です。相手が本当に大切な決断に集中できるよう、こちらはアシストする立場です。そこで、「我々はこんな未来を思い描いています」と未来像を共有することで、聞き手と共通のビジョンを築くことができます。 具体的なビジョンを示すことができれば、提案する人とされる人が同じ未来を共有することができます。同じ方向を目指す仲間となるのです。悩みを共有する手もあります。「ここが何よりの課題ですよね」という危機感もまた、チームを仲間にする強力な絆となるのです。