裏と表のない世界!左右の逆転が起こる!境界が1つしかない!そして「結び目」が出現する!メビウスの帯とアニュラスの不思議な図形世界
表と裏のない世界!
まず、アニュラスとメビウスの帯を作ります。アニュラスは捻らずに(0回捻る)つなぎ合わせたもの、メビウスの帯は半回だけ捻りつなぎ合わせたものにします。 次に、それぞれの片面にだけ色を塗ります。このとき、インクが裏側にうつらないような紙やペンを使ってください。 当然、アニュラスは、表面か裏面のどちらかのみに色を塗ることができます。しかし、メビウスの帯は、どうでしょう。できそうにない……と思いましたか? これは実際できないことが知られています。 実際にやってみると、メビウスの帯も部分的には裏表を塗り分けられます。しかし、メビウスの帯全体として裏表を塗り分けることは不可能です。これが、アニュラスの性質とメビウスの帯の性質の違いのひとつです。これをおおらかに「メビウスの帯は裏表がない」と言うこともあります。
アニュラスとメビウスの違い2
今度もアニュラスとメビウスの帯を作ります。ここで、紙の表に右回りの円状の小さな矢印を並べて描いてください。このとき、さきほどとは違いインクが裏側に染みるペンを使ってください。 アニュラスの場合は簡単です。表には右回りの丸矢印が並びます(図4左)。 この図を裏返したものが図4の右です。 このとき、裏側から見るとこの円は左回りの丸矢印が並んでいるように見えることに注意してください。 では、メビウスの帯ではどうなるでしょうか?
左右の逆転が起こる!
メビウスの帯では、一周して戻ってくると丸矢印の向きが逆になります(図5)。 このことを、アニュラスは「向き付け可能」、メビウスの帯は「向き付け不可能」といいます。丸矢印を小さい部分でとなりと向きを揃えるというのはできるけれど、メビウスの帯全体では揃えられないということです。これも、アニュラスとメビウスの帯の性質の違いです。 講演会などでこの話をしたときに、「同じことをやってみたら、メビウスの帯なのに丸矢印の向きが全体で揃いました。どうしてですか?」という質問をされたことがあります。 この質問をした方は「インクが裏まで染みないペン」で、描いてしまったのです。そのため両面に丸矢印が描かれてしまうので丸矢印の向きが全体で揃ったのです。