「ベテルギウス」には未知の伴星 “ベテルバディ” がいるかもしれない
未知の伴星の存在が長い変光周期を説明できる
Goldberg氏ら3氏は、ベテルギウスの基本的な変光周期がどちらであるのか、そして基本ではない変光周期はどのような理由で発生しているのかを検討しました。今回の研究では、ベテルギウス自体や、ベテルギウスと似たような恒星の観測記録を元に様々な仮説を立て、コンピューターモデルでそれぞれの妥当性を検証しました。 まず3氏は、2170日周期は基本的な変光周期ではないことがほぼ確定的であると考えています。これは2170日周期の仮定が、過去数千年に渡るベテルギウスの色の観測記録、ベテルギウスの推定半径、脈動変光星のこれまでの知見と矛盾するためです。 では、2170日周期の変光はどのようにして発生するのでしょうか? そこで、対流、自転、磁場など、9通りのシナリオを仮定し、観測結果との照らし合わせやシミュレーションをしたところ、「ベテルギウスには未知の伴星がある」とする説が、大きな矛盾なく説明できる唯一の説として残りました。 ベテルギウスは赤色超巨星として膨張しており、大量の塵を宇宙空間へ放出しています。塵は光を吸収するため、ベテルギウスの光は幾分か塵に遮られているはずです。もし、ベテルギウスのすぐ外側を公転する未知の伴星がある場合、放射が除雪車のように塵を押しのけるため、部分的に塵の薄い箇所ができるはずです。3氏は、伴星の公転に伴い、塵の薄い箇所が周期的に地球の側を向くことが、2170日周期の由来であると考えています。 未知の伴星は、最低でも太陽の1.17倍、おそらくは2倍前後の質量を持つと推定され、ベテルギウス自体の大きさ(半径)の約2.4倍、ベテルギウスの中心から13億kmの距離を周回していると考えられます。正体は不明ですが、恒星か、もしくは中性子星(※2)であると考えられています。しかし中性子星の場合、塵との相互作用で強いX線を放射すると考えられるため、現在でも観測されていない理由は謎です。 ※2…太陽より重い恒星が超新星爆発を起こした後に残す、収縮した中心核。ベテルギウス自身も、超新星爆発を起こせば中性子星を残すのではないかと考えられています。