宝塚を退団して10年、初めて感じた男役のブランク。上杉謙信公を演じるため、重い刀で、まずは抜刀納刀の練習
◆初めて感じた男役のブランク 宝塚を退団して10年。 退団してからも男役の声を出すこともあったので、男役をすることにあまり心配はしていませんでした。 ところが、初めて感じた男役のブランク。 10年、男役の声で大声で叫ぶことはありませんでした。 今回させていただく上杉謙信の役では、何度も何度も吠えます。 叫ぶというより吠えるのです。 川中島の合戦ではやっていくうちにテンションもどんどんあがり、声帯をキズつけてしまうかもしれないと思いながらも、気がつけば体を反らして吠えていました。 声を飛ばすには身体を使うのがコツです。 身体の動きにあわせて声を出すと遠くに飛びます。 それを使って、吠える吠える吠える。 喉から血が出るかと思いました。 宝塚時代、よく吠える悪役が多かったのに、どうやって声を作っていたのかがわかりません。 ただひたすらに吠えていたら強くなったのか。 己の声帯は人より太いんだと思い込み、イメージしたものを体現していきます。 もっと太く、深く、大きく、遠くに。 イメージは完璧なのに現実は難しい。 これが10年のブランクというものなのでしょう。 10年目にしてまたこんなに吠える日が来ようとは…。 男役を封印脱却しようと頑張ってきた10年でした。 別れを告げたはずだったのに、今ここにきて、最も男くさい戦国武将を演じることになろうとは思いもよらない事でした。 もう男役に抗うことはやめようと、10年の時を経て思う今日この頃。 図々しさと貫禄を増した私は戦闘態勢で吠えることでしょう。 「此度の戦、皆の命、我に預けよ! 上杉全軍、いざ出陣!」
越乃リュウ