実力派外野手が多数指名漏れの中で…モイセエフ・ニキータはなぜヤクルト2位指名を掴んだのか?
今年のドラフト会議では本指名、育成合わせて123名が指名された。その中で指名が少なかったのは捕手と外野手で、捕手の本指名5名、外野手の本指名6名しかいなかった。しかも高校生外野手の本指名は1人きりだった。それがヤクルト2位のモイセエフ・ニキータ外野手(豊川)である。今年の外野手の実力派たちを追い抜いてモイセエフが指名された理由を考えていきたい。 【動画】モイセエフ・ニキータの衝撃打撃練習!
外野手は高校生よりも大学生のほうが人材豊富だった
まず今年のドラフト指名候補を整理していきたい。高校生外野手はモイセエフのほかにスラッガー・正林 輝大(神村学園)、超俊足の藤原 佑(大社)らがいたが、指名候補に入る絶対的な外野手の数は少なかった。 大学、社会人、独立は人材豊富で、ロッテ、オリックスの2球団が競合したスラッガー・西川 史礁(龍谷大平安-青山学院大)、走攻守三拍子揃った強打の外野手・麦谷 祐介(大崎中央-富士大)がオリックスのハズレ1位、即戦力の呼び声が高いクラッチヒッター・渡部 聖弥(広陵-大阪商業大)が西武2位とスラッガーたちが上位で消えた。渡部は三塁手としてのスタメンも多くなっており、内野を守れたのも大きいだろう。 一方で、大学代表で俊足強肩の飯山 志夢(中央学院-立正大)、走攻守三拍子揃い、打撃面が急成長した左の巧打者・柴崎 聖人(岐阜第一-大阪経済大)、独立リーガーでは四国独立で二冠王を達成した徳島インディゴソックス・寺岡 丈翔(東福岡-福岡大)、二軍球団ではイースタンリーグの首位打者・知念 大成(沖縄尚学-沖縄電力)といった実力派の野手たちが指名漏れしている。
昨秋からこの夏の公式戦まですべて爪痕を残した
その中でモイセエフが指名されたのは、まず順調に成長し続けた点にある。 脚光を浴びたのは昨秋だ。東海大会で16打数10安打、1本塁打5打点と大当たり。しかも三振は0だった。神宮大会では5打数3安打で、弾道の高い本塁打を打った。結果、内容ともに申し分なかった。 そしてセンバツでは本塁打が激減した中で新基準バット第1号本塁打。しかしモイセエフは1本塁打を打ったことよりも3三振したことを反省し、打撃フォームを変更。もともと頭より上にあったトップの位置をセンバツ後から頭より下がった位置にし、よりシンプルな構えになった。その結果、春季県大会では、13打数9安打の好成績を収めた。結局、昨秋から春の県大会まで打率6割超えで、不調だった大会がなかった。 最後の夏の大会では勝負を避けられる場面が多く、5回戦敗退で、7打数3安打に終わったが、5四球。出塁率は.667だった。これを見ても高いコンタクト力の高さがうかがえる。豊川の長谷川裕記監督は「夏になって打席内で我慢ができている」と評価していた。 守備に対する意識も高く、神宮大会ではフェンスにボールを投げて跳ね返りを確認したり、バックホームを見るとなかなかの強肩で、走塁意識も高い。 同じスラッガーだった正林は甲子園で21打数3安打、5三振。鹿児島大会では打率.450だったとはいえ、甲子園の印象が悪すぎた。一方、どの大会でも安定した成績を収めたモイセエフは、高校生外野手の中で一歩抜けた存在となった。 しかし、ドラフト2位の評価を得るには、上述したように大学生・独立リーガーのライバルも多かった。彼らを上回る評価を得たのは、モイセエフの打撃練習の内容、フィジカル面、総合力が高く評価されたと考える。