20年ぶり新紙幣発行 対応間に合わない事業者も…加速する「脱現金」
■新紙幣への対応…設備切り替えに混乱も
新紙幣への対応による混乱です。 飲食業界です。 ラーメン店を展開している企業では、新紙幣に対応する券売機に交換するのに、4店舗で約600万円の出費ということです。 「出費は痛い」という、この企業の社長です。 「600万円回収のため、ラーメンを1杯50円値上げしたが、12万杯売らないと、もとは取れない計算」と話しています。 交通業界です。 福井県内で路線バスを運行する福鉄バスは、所有する約50台の車両で新紙幣対応の両替機に部品交換をする予定でしたが、間に合わないということです。 なぜ、間に合わないのでしょうか。 福鉄バスの担当者は、 「作業するメーカーの人手が、不足していると聞いている。改修完了予定の8月中旬までは、バス車内で、運転手が新紙幣と旧紙幣を交換することにした」と話しています。 そして、コインパーキングです。 近畿でコインパーキングを運営する企業は、精算機約50カ所のうち30カ所で、更新が間に合いません。 間に合わない理由です。 コインパーキングを運営する企業の担当者によると、 「メーカーから『生産が間に合っていない』と聞いていて、作業は入荷次第になる」ということです。 新札への対応が必要な機械は、7月3日までに、どれくらい更新されるのでしょうか。 ●金融機関のATMは9割以上 ●鉄道の券売機が8~9割 ●バスの券売機が6~7割 ●飲食店などの券売機やコインパーキングなどの精算機が5割程度 ●飲料の自動販売機が2~3割 だということです。 なぜ、多くのところで間に合わないのでしょうか。 券売機を販売している業者の担当者です。 「飲食店は、材料費や光熱費などの価格高騰もあり、設備投資にお金を使いたくない。実際、注文が増えたのは今年になってから。部品交換は、これからの注文を含めると、10月あたりに終わる見通し」 ただ、財務省の担当者は、経済効果もある、 「新紙幣の対応で、約7700億円の需要を見込んでいるとの試算がある」と話しています。 社会的金融教育家の田内学さんによると、 「経済効果があると言われているが、お金が移動しているだけで、コストを事業者が負担することになる。さらに、コストは価格に転嫁され、最終的に消費者の財布を直撃する」ということです。 今回の新紙幣発行をきっかけにした、脱現金の動きも出ています。 日本のキャッシュレス決済の比率は、2010年は13.2%でしたが、2023年には39.3%まで上昇しています。 政府の目標は、「将来的に80%を目指す」としています。 日本も上がってはきましたが、韓国は93.6%、中国は83%です。 新紙幣発行で脱現金に動いたのが、都内を中心にラーメン店を展開している企業です。 2023年10月、一部店舗で、キャッシュレス決済だけに対応する券売機に切り替えました。 切り替え後の効果です。 ●売り上げの集計業務が簡略化され、集計ミスや盗難の心配がなくなりました。 ●閉店後の作業が30分から5分に短縮されました。 ●月に15万~20万円の人権費が削減されました。