ボーイングの「空飛ぶ無人タクシー」2030年までに米国での実用化を期待、アジア市場への参入計画も
各国・州との提携、飛行試験を着々と実行
Wisk Aeroでは航空機の開発と並行して、安全性や実現可能性を実証するための飛行試験や論文の発表、航空タクシーの実用化へ向けた各国・州との業務提携をスピーディーに実施している。 例えば、ニュージーランドでは、有人航空機が管理する空域に無人航空機が安全に統合できることを実証するための飛行試験を2023年12月に実施。Wisk Aeroは「無事に完了した」と報告している。 ニュージーランド政府は、2019年に空域統合試験プログラム(AITP)を発表しており、これは航空技術の進歩、地域社会の期待、経済的利益の実現を踏まえ、空域システムが卓越した安全レベルを維持することを実証する4年間にわたる世界初のプログラムだ。Wisk Aeroは同プログラムにおける初の業界パートナーであり、2020年にニュージーランド政府とMOU(覚書)を締結して以来、多段階のテストを実施している。 2024年2月には、自律型先進航空モビリティ(AAM)をヒューストン大都市圏に導入するための提携をテキサス州シュガーランド市と締結。同年6月には、ヒューストン空港とも提携し、グレーター・ヒューストン地域とヒューストン空港を結ぶ航空ルートを開発すると発表している。
10年以内に「アジア市場」への参入を計画、JALと提携も
海外メディアの報道によると、ボーイングでは米国での飛行に加え、これから10年以内にアジア市場での航空タクシー事業に参入するという野心的な計画があるという。 「長年にわたり国外へ事業を拡大しているボーイングは、米国以外にオーストラリア、韓国、インドに研究開発施設を持っている。ボーイングはすでに航空機の供給提携を結んでおり、三菱重工、川崎重工業、SUBARU(スバル)など日本の大手メーカーも地域に工場を設立している」と記事では紹介されている。
Wisk Aeroでは、2023年5月に航空タクシーを日本に導入する目的で日本航空(JAL)とパートナーシップを締結している。両者は日本における航空タクシーの保守、および運用計画を策定するために緊密な協力体制を築くとしている。 同時に、Wisk AeroとJAL、日本国国土交通省航空局(JCAB)、その他の日本政府関係機関における協力の枠組みを確立するMOUも締結。これには、規制要件、安全対策、関係各社の利益などの検討が含まれるそうだ。 こうした動きを見ると無人航空タクシー実用化への期待が高まるが、1度の充電で複数回の移動を可能にする強力なバッテリーの開発などの技術的進歩に加え、安全性の確立や規制の検討など、まだまだ超えるべきハードルは多いようだ。2030年までに「空飛ぶ無人タクシー」が現実になるのか。Wisk Aeroの挑戦を引き続き注視したい。
写真提供:Wisk Aero/ 取材・文:小林香織/ 編集:岡徳之(Livit)