マイナ保険証「政府はメリットばかりを強調」…“一本化”に反対する団体が厚労省・デジタル庁に“現行の保険証”発行継続など要請
現行の健康保険証の新規発行停止が12月2日に迫り、残り1か月を切った。政府が推進するマイナンバーカードと保険証を一体化した「マイナ保険証」の利用件数は2715万件で、利用率は13.87%と、いまだに普及は進んでいない。 【写真】「押しつけ反対」のメッセージを掲げるデモ隊 そうしたなか、11月7日、労働組合や商工業者団体らによる「マイナンバー制度反対連絡会」は、全国保険医団体連合会(保団連)などの複数の団体とともに、参議院議員会館で厚労省・デジタル庁に対する要請を行った。
医療機関でトラブル多発も、政府「従来の方針堅持」
石破茂首相は自民党の総裁選中、保険証のあり方について「現行保険証との併用も選択肢」と主張していた。 しかし、首相就任後は一転して、マイナ保険証移行について「従来通りのスケジュールで進める」と述べた。 岸田政権から官房長官を続投する形となった林芳正氏も、総裁選期間中は廃止期限について、延期を含めて「検討したい」と述べていたが、石破新内閣の発足以降は「発行廃止の方針に変わりはない」と発言。 同様に、石破内閣の発足で新たにデジタル担当相に就任した平将明氏も「従来の方針を堅持する」と述べており、政府・与党によるマイナ保険証への移行が進められている。 しかし、マイナ保険証をめぐっては、医療機関でのトラブルや、マイナンバーカードの安全性など課題が山積している。 保団連が10月に発表したアンケート調査結果では、今年5月以降、約7割の医療機関でマイナ保険証、オンライン資格確認に関するトラブルが発生していたことが明らかになっていた。 このほかにも情報プライバシー・自己情報コントロール権の観点などから不安や疑問を抱いている人も少なくない。
12月以降の保険証発行など要請
こうした現状を受け、マイナンバー制度反対連絡会は福岡資麿厚労相と平デジタル担当相宛ての文書にて、現行保険証を廃止する方針を撤回し、12月2日以降も発行し続けることを要請。出席した各団体の代表者らが、厚労省とデジタル庁の担当者に、要請文を手渡した。 この日、要請に立ち会った共産党の山添拓政策委員長は衆院選での与党過半数割れに触れつつ、次のように述べた。 「マイナ保険証に対しては、多くの国民が懸念を持ち、反対しており、医療機関でも多くのトラブルが報告されています。 与党はこれまでのように、政策を無理やり数の力で“ごり押し”することはできません。 今後も声をあげ、マイナ保険証への一本化から、制度を変えていきたいと思います」 今回の要請行動にあわせて、マイナンバー制度反対連絡会では事前に厚労省・デジタル庁に対し、下記の4点の質問を通告。この日、各担当者が回答した。 ①マイナ保険証の利用率が伸び悩んでいるのは、何が原因だと考えているか ②医療機関でトラブルが多発し、国民の理解が十分に得られたとは言えない中で、短期間で保険証を廃止しなければならない合理的な理由はあるのか ③普及を図る理由として、「なりすまし防止」を強調しているが、保険証を用いた「なりすまし」に関するデータはあるのか。また、マイナ保険証が不正利用される可能性は想定しているか ④マイナ保険証の登録解除について、政府の責務として全国民に周知するべきではないか