<チ。 -地球の運動について->小西克幸×中村悠一×仁見紗綾インタビュー(1) 「自分は懸命に生きているか」自問自答させる魅力
小西さん オクジーは、超ネガティブ人間です(笑)。時代背景的に宗教色が強いので、そこにずっと染まり続けているというか。この世は汚れていて、一部の人間しか幸せになれなくて、自分たちは死んで天国に行かないと幸せになれない、という教えをずっと聞かされてきたので、それが違っていようが、正解だろうが、もうよく分からなくなっているんじゃないかなと思っていて。「自分はダメな人間なんだ」と思ってずっと生きてきているような人間ですね。だから、人から何か言われても口答えすることもないし、バデーニにむちゃくちゃなことをされても、「あ、すみません……」となってしまう。それほどまでポジティブになれない彼がどういうふうに変わっていくのかを見ていただきたいですね。ずっとネガティブだけど、強く真っすぐ生きている姿も、とても可愛いなと思うので、そういうところも見ていただけるとうれしいなと思います。
--そんなオクジーがどんどん地動説の研究に熱中していきます。
小西さん そうなんですよね。だから、熱中できるものを見つけたんですよね。多分今まではきっとそれがなかったんですよね。ようやく「これはいいんだ」「こんなにすてきなことがあるんだ」という一つのきっかけからどんどん変わっていく。ちょっとずつ自分の中で芽生えてきたものなんじゃないかなと思っています。
--オクジーの“推し”シーンは?
小西さん 初めてバデーニと会った時、血の臭いがすると言われて鼻をつまんだ状態で話をされるんですけど、オクジーはそんなことをされても「あ、はあ……」みたいな感じで普通に受け取っているのが、とても可愛かったな、彼らしいなと。
--バデーニの印象は?
中村さん バデーニはすごい自信家で不遜な人で、周りを見下していて、推せるポイントがない人ではあるんですけど(笑)。でも、僕はこの「チ。」という作品を原作の1巻から順番に読んでいった時に、ここまで我が道を突き進めている人っていないかなと。結果的に、作品の主題に対しては真っ当な行動をとってはいるんですけど、世間から外れようが何しようが貫くという信念を、地動説と出会って持ったのではなくて、元々持っている。自分が「知りたい」ということに対して、それほどの信念を元々持っている人はなかなかいないし、それで目を焼かれようが全然関係ないと。目が焼かれるんなら反対の目があるぞ、手脚があれば動けるぞと考えて、自分のために行動するところがキャラクターの面白さになっていると思います。ただ、一人で物語の中心にいるには、あまりにもめちゃくちゃな人なので、オクジーとのバランスはすごく取れていると思います。最初は鼻をつまんで話していたような関係が、ドラマが進む上で、お互いからの影響を良い形で受けて、最後は共に歩んでいくというところがやっぱり面白いところですよね。
インタビュー(2)に続く