親が亡くなりました。親の遺産に不動産があるのですが、不動産は相続のときにトラブルになりやすいと聞きます。どのようなリスクがあるのでしょうか?
不動産を含めた遺産分割の難しさ
先述したように、不動産には「流動性が低い(現金化しにくい、時間がかかる)」「分割しにくい」「評価額の算定に幅がある」などの特徴があります。遺産分割には ●現物分割 相続財産を物理的に分割する ●代償分割 財産を多く得た人がほかの相続人に金銭を支払う ●換価分割 相続財産を売却し、現金化して分割する ●共有分割 相続財産を共有とする という4つの方法があります。分割しにくいからといって、不動産を共有で相続することは基本的には避けたいところです。 その財産を処分(売却するだけでなく、賃貸する場合や大規模な修繕を行うなども処分行為にあたります)も共同で行わなければならなくなるほか、次の相続が発生した場合に相続人の数が増え、手続きが煩雑になります。 分割する場合も、簡単ではありません。同じ面積で分割しても平等にはならないケースがほとんどです。 また、不動産は「一物四価」などといわれます。相続税の算定の基準額は「相続税評価額」を算出して行いますが、相続税評価額は実勢価格と同じではありません。 遺産分割協議の際には、協議時の時価が問題になります。相続財産に同等の相続税評価額の不動産が複数あったとしても、実勢価格は違うでしょうし、同じ不動産でも鑑定する人によって価格に大きな差が出ることもあります。 そして何よりも「不動産より現金が欲しい」「こちらの不動産は欲しいが、こちらはいらない」という相続人がいた場合、意見が合わず、遺産分割協議でもめる可能性がありそうなことは想像に難くないでしょう。 築年数の古く空室が多くなったアパートや、管理に費用がかかる不動産、どの相続人も欲しがらない田舎の不動産などは、相続発生前に対策をしておく必要があります。
まとめ
不動産が相続財産にある場合、事前に準備しておくべきことがいくつもあることがお分かりいただけたでしょうか。不動産は唯一無二です。ここには書ききれないケースも、たくさんあります。 相続対策は資産状況のほか、相続人などの親族関係なども多分に影響します。相続税だけではなく、分割対策や納税資金対策なども含め幅広く考える必要があります。相続対策を考える際には、まずどのようなリスクがあり得るかを考え、トラブルの芽を事前に一つひとつ摘み取っていく必要があります。 こと不動産に関しては、弁護士や税理士も詳しいとはかぎりません(むしろ詳しい人はまれです)。金融機関も詳しいとはいえませんし、普通の不動産業者は売買がメインなので相談しても本人の希望に沿った提案を受けられるとはかぎりません。不動産に強い相続コンサルタントを探すことが対策の第一歩だといえるでしょう。 出典 国税庁 令和4年分 相続税の申告事績の概要(令和5年12月) 国税庁 No.4102 相続税がかかる場合 東京法務局 相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)~なくそう 所有者不明土地!~ 執筆者:西山広高 ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))、上級相続診断士、宅地建物取引士、宅建マイスター、西山ライフデザイン代表取締役
ファイナンシャルフィールド編集部