親が亡くなりました。親の遺産に不動産があるのですが、不動産は相続のときにトラブルになりやすいと聞きます。どのようなリスクがあるのでしょうか?
不動産の名義の問題
不動産を購入したときには、「所有権移転登記」を行っているはずです。所有権移転登記を行わないと住宅ローンを借り入れる際に抵当権の設定ができないこともあり、また登記は第三者に対し自身が所有者であることを対抗する重要な証拠であることから、トラブルを避けるためにも登記を行います。 しかし、何代も前から所有している不動産の場合、登記されている名義人がすでに亡くなっているのもかかわらず、相続登記を行わないまま放置されているケースは今も少なくありません。 2024年4月1日から、相続登記が義務化されました。相続により不動産を取得した相続人は、自身が相続人であることを知った日から3年以内に相続登記を行う必要があります。 この規定は過去に発生した相続にも遡及(そきゅう=さかのぼって)適用されます。相続登記を行っていない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。相続登記未了の場合の問題は、登記だけではありません。例えば、図表1のような家族構成の場合で考えてみます。
<図表1> 30年前に亡くなった相談者Aの祖父Gが所有していた不動産を、3人兄弟の長男である父Xが兄弟間でもめることもなく相続しました。しかし、父Xは相続登記を行っていませんでした。 この度、父Xが亡くなりました。父の兄弟のうち、三男のZは数年前に他界しています。また、父の弟Yは認知症になっています。Xの子Aは父が相続した不動産を相続することになりましたが、今後使う予定もないことから売却しようと考えています。 ところが、登記簿を調べてみたところ不動産の名義は父Xではなく、祖父Gのままになっていることが分かりました。 このケースの場合、登記名義をAさんにしなければ売却はできません。登記を行う場合、登記所からは相続登記の根拠書類を求められます。「当時の遺産分割協議書とその遺産分割協議書に使われた実印の印鑑証明書が必要」と言われましたが、30年前に作成されたはずの遺産分割協議書が見つかりません。 この場合、該当する不動産部分だけでもよいので、改めて父Xとその兄弟Y、Zを相続人とする遺産分割協議書を作成する必要があります。しかし、次男Yは認知症であること、Zは他界しているため、Zの代襲相続人であるD、Eの協力が必要なことなど、問題は山積です。 こうなってしまうと、問題解決は大変です。少なくとも父Xが相続登記さえしておいてくれれば、こんな問題にはなりませんでした。