田中圭の芝居がリアルすぎる…モラハラ夫”宏樹”の印象が激変したワケ。『わたしの宝物』第2話考察レビュー
松本若菜主演のドラマ『わたしの宝物』(フジテレビ系)が放送中。本作は、「托卵(たくらん)」を題材に、”大切な宝物”を守るために禁断の決断を下した主人公と、その真実に翻弄されていく2人の男性の運命を描く愛憎劇だ。今回は、第2話のレビューをお届けする。(文・西本沙織)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】田中圭の迫真の芝居に痺れる…貴重な未公開写真はこちら。ドラマ『わたしの宝物』劇中カット一覧
一生嘘をつき続けることは出来るのか?
美羽(松本若菜)のお腹には、幼なじみ・冬月稜(深澤辰哉)の子どもがいる。夫である宏樹(田中圭)の子ではないからか、母親にも、親友にも、笑って「子どもができたよ」なんて言えない。 一生嘘をつき続けることなんて、私にできるのか。そんな重苦しい問いとともに、『わたしの宝物』第2話は幕を開けた。 美羽の妊娠を聞いた宏樹は、複雑な感情を募らせる。いつも妻にきつい言葉を浴びせてしまう自分が、父親になるなんて。想像できないし、上手くやっていける自信もなかったのだろう。 田中圭の含みを持たせる演技で、宏樹はただの“嫌なヤツ”ではないのだろうな、と。そうほんのりと感じてはいたが、それを示唆するように徐々に“宏樹の事情”が明らかになっていく。
宏樹もまた“耐え忍ぶ側”であり“戦う側”の人間だった
宏樹は、大手商社に勤める優秀な会社員。人当たりもよく、仕事も順調で、部下からの信頼も厚い…というのは少しばかり聞こえがよくて。実際は、上司からパワハラを受け、後輩からは「要領が悪い」「ああいう上司がいると便利だよな」と陰口を叩かれている。美羽が宏樹のハラスメントに耐えていたように、宏樹もまた、“耐え忍ぶ側”であり“戦う側”の人間だったのだ。 そんなことが積み重なれば、心がいっぱいになって、誰かに当たってしまいたくなるのもわからなくはない。だからといって、モラハラは肯定できないけれど。きっと、美羽への甘えもあったのではないかと思う。 本来、宏樹は真面目で一生懸命で、優しい人間なのだろう。でも、社会ではそんな思いやりのある人こそ追い詰められ、疲弊していく。そんな時、「逃げちゃえば?」なんて言ってくれる人がいたら、どんなに心が救われることか。 宏樹が偶然出会った喫茶店「TOCA」のマスター・浅岡忠行(北村一輝)は、まさに欲しい言葉をくれる“救世主”だった。まるでNetflixドラマ『地面師たち』(2024)の竹下のような怪しい風貌にドキッとするが、そのあっけらかんとした性格に宏樹は心を開いていく。 モラハラまがいのことをしてしまっているが、宏樹は結局のところ美羽が好き。それは、美羽と出会った時にもらったハンカチを、お守りのように握りしめている姿からも容易に受け取れた。そんな不器用で、世渡りが意外に下手な宏樹は、田中圭の繊細な演技でより人間臭く、身近で、リアルなキャラクターに映る。だからなのか、美羽と2人で話し合うシーンは、とくに記憶に残る場面だった。