年越し蕎麦で食べたい!「郷土蕎麦」12選
江戸前だけが蕎麦にあらず 当世郷土蕎麦案内
江戸時代中期以降、関東で醤油づくりが盛んになると、蕎麦のつけ汁が登場し、蕎麦の人気が高まった。江戸後期の風俗史『守貞謾稿』に《江戸の蕎麦屋は一、二町毎に一戸あり》と記されたほど、数多くの蕎麦屋があったという。往時から「もり」や「かけ」は蕎麦の定番で、この江戸前の蕎麦は参勤交代などで地方にも広まった。 写真はこちらから→年越し蕎麦で食べたい!「郷土蕎麦」12選 とはいえ地方では、地域の特性を活かした郷土蕎麦が発展した。たとえば、新潟のへぎそばのように、つなぎに布海苔を用いるものもあれば、長野のすんきそばのように、当地にしかない漬物を入れるなど、さまざまな特産物と組み合わさった蕎麦も多い。はたまた、青森の津軽そばのように、製粉してから食べるまでに数日を要する蕎麦もある。「煮置き」と呼ばれる製法で“茹でて冷やして寝かせる”を繰り返すことで、柔らかく、保存性の高い蕎麦になるそうだ。 蕎麦はほかの麵よりも細長く切れやすいため、“厄災や苦労を断ち切る”や“延命長寿を願う”など縁起物としても重宝された。なにより日本は各地においしい水がある。ゆえにうまい蕎麦が育まれ、今も受け継がれている。旅の目当てにもなる郷土蕎麦を味わいたい。
北海道 にしんそば
甘露煮にした身欠きニシンをのせたもの。濃口の味付けで汁はほのかに甘い。江差町でニシ ン漁が栄えたころに発祥した。 青森 津軽そば 保存性を高めるために「煮置き」を施す。箸で持ち上げると切れるほど柔らかく、つなぎに呉(すりつぶした大豆)を使う。
岩手 わんこそば
ひと口分の蕎麦を盛った椀で供される。次々におかわりが投げ入れられ、食べた椀の数を競う。麵は長く、のど越しがよい。
山形 板そば
長い板の上に数人前を盛り付ける、村山地方の農作業後の振る舞い蕎麦に由来。“板につくように”という願いも込められる。
福島 ねぎそば
会津は大内宿の名物。1本の長ねぎを箸代わりにする。ねぎを齧れば薬味になり、つゆではなく辛味大根の搾り汁を使う。
新潟 へぎそば
布海苔(織物に張りを持たせる役割)をつなぎにした、新潟の織物文化と蕎麦文化が融合。“へぎ”という器に盛り付ける。