経済産業省・物流企画室長の中野剛志氏に聞く CLOを起点として期待される企業間の「水平連携」とは?
共同輸配送がうまくいきはじめると仲よくなって、「他にもできることはないか」といった形で、例えば、物流の肩代わりだけじゃなくて、生産の肩代わりみたいなこととか、原材料の共同調達とか、いろんなことをやりはじめる会社が出てくるのではないかと思っています。 そうすると、垂直統合と水平連携で、織物の縦糸と横糸みたいな感じで産業構造が新たに織り成されて、おそらく別のものになっていくでしょう。そして、水平連携の時にもデジタル化が大きな効果を発揮するでしょう。 森:水平連携で共同輸配送がさらに拡大して、今いわれたように、物流だけではなく他のところにも影響し、垂直・水平両方の連携が強化されることで、産業構造そのものが変わってくるだろうということですね。 中野:そう思いますね。まだそこまで気づいている人はいないし、本当にそうなるのかはわかりませんが、論理的に考えると、そうなるのではないでしょうか。リスクと不確実性がより一層高まるこれからの世界で、産業構造を変えようとする時には、ある意味、物流という裏口から入って表から出るのが、近道なのかもしれません。 森:今、産業の話をしましたけれども、消費者には何か影響が出るでしょうか。 中野:これだけ物流危機が話題になっているので、消費者の問題意識も変わるでしょう。ただ、こういってはなんですが、所詮BtoC物流は全体の1割以下に過ぎません。 マスメディアが取り上げる物流危機の話題は、「宅配便が届かなくなる」というイメージがありますし、eコマースが急速に発達したので皆さんそこに注目しがちですが、全体で見ると、割合はそんなに高くはありません。むしろ消費者への影響という意味では、過疎でだんだん買い物へのアクセスができなくなる地域が増えてきて、物流に頼らざるを得なくなることのほうが問題です。 物流が非効率でコストがかかるとなると、地方の共同体が死んでいってしまいます。今回の改正物流効率化法の成立を機に、物流の効率化がうまくいけば、地方の隅々まで物が届くし、地方から出てきた産業、地方で作られた製品を全国に届けることもできます。 その意味では、物流が効率化されていて余裕がある状態は、今後増えてくるであろう地方の消費者、高齢者、買い物弱者といわれるような人たちへの対応として、ものすごく大事だと思います。逆にいうと、「物流のコストが高いから、今住んでいるところは捨てて、都会の集合住宅に入ろう」といったことをしなくて済みます。 特に地方の農業における輸送能力不足は深刻です。農業の物流が効率化しないと、非常にまずいですよね。そういった意味では、地方の生活者への影響は、すごく大きいのではないでしょうか。
森 隆行