モーリーが解説! 「みんなちがって、みんな保守」――トランプ旋風に続く米共和党の新戦略とは?
MAGAの次は「多様性×保守」? トランプの出現後、MAGA(Make America Great Again)に振り切れた共和党は、「古き良き白人保守」への回帰を諦め、バージョンアップを試みてきました。 2020年の時点で、アメリカのヒスパニック系人口は6210万人。2010年からの10年で全米の人口が7%増加したのに対し、ヒスパニック系に限ると23%も増加しています。共和党はその人々に注目し、分析し、それぞれのコミュニティの「絆」にまで手を伸ばし、移民=多様性=リベラルという従来型の方程式を突き崩し始めた。その戦略が、フロリダでは見事に成功しています。 共和党は長年、白人保守層の政党であり続けましたが、人口構成の変化もあり、今後もそこに固執していては存亡に関わる。だからこそ「変わる」ことを考えた。そのとき、一獲千金の野心、成功への欲望に駆り立てられアメリカに来た中南米からの新移民は〝金の卵〟に見えたでしょう。 民主党が掲げる多様性重視という恒久的な価値観、「みんなちがって、みんないい」という理想は、実は「はい上がろうとしている人」からすれば、しゃらくさい一面がある。抽象的なメッセージに反対まではせずとも、熱くはなれない。ここに共和党は切り込んだのです。 多文化共生ではなく、多文化〝混沌〟を許容しながら、それぞれがアイデンティティを武器に戦いを挑み、より弱肉強食化していく荒々しい社会像――いうなれば「みんなちがって、みんな保守」とでもいうべき世界観を、まだぼんやりとではありますが、共和党は示しつつあります。これがさらに確立されれば、トランプがいなくなった後も、共和党は新たな支持層を広げていけるかもしれません。 逆に、民主党は危機に立たされています。ヒスパニックのみならず多くの若年層にとって、今の民主党はもはや固定化された価値観と使い古された進歩主義の枠組みに固執しているように見えている可能性があるからです。 「多様性」というスローガンはその定義からして、原理的に熱を帯びづらく、また熱を維持しにくい。「反トランプ」の戦いが事実上終わり、次にこの構造的問題をどう克服していくのか。今後4年間、それが民主党にとって極めて重要な課題になるだろうと思います。