“珍装備”が個性的だった1990年代の日本車3選
他車との差別化を図るべくうまれた、マニアックな装備に注目! 【写真を見る】“珍装備”を採用した希少車の細部(179枚)当時の貴重なカットに迫る!
バブルの名残
“車内のラウンジ化”ということが言われて久しい。クルマにとって大事なのは、走りの機能だけでなく、車内の居心地のよさ、という点に注目しているのだ。 なかでも1990年代には、新しい試みをするモデルがいくつもあった。 ただし、それらの技術がずっと継承されているかというと決してそうではない。でも、クルマの開発は試行錯誤の繰り返し。過去があるから今がある……と、思えば、たとえ「?」な装備でも意義があったのだ。
(1)トヨタ「セラ」:ガルウイングドア
トヨタが1990年代に発表したセラは、衝撃的だった。全長3860mmとコンパクトなボディに、半球形のガラスドームを載っけたような、大胆なデザインコンセプトが採用されていた。 予感的なものは、1987年と1989年、2回続けて東京モーターショー(当時)にコンセプトモデルが出展されたときからだった。2回続くとメーカーは量産化を真剣に検討している……と、考えられる。“2回続けて1回休み”というと、より現実味が濃くなるもの。 1990年に登場したセラは、トヨタによるコンセプトモデル「AXV-Ⅱ」をより洗練させたスタイリングだった。キャラクターラインを排することで、卵のような球体感を強調。コンセプトモデルでは、ガルウイングドア(のちにトヨタはバタフライドアと呼んだ)が、話題になったが、セラは透明感の強い「グラッシーキャビン」が強調された。 サイドウインドウはルーフの一部と一体化しており、乗り降りも楽だったけれど、なにより室内に入ると明るくて、頭上の視界のよさには驚かされた。サイドウインドウは、デロリアン「DMC12」(1981年)とかスバル「アルシオーネSVX」(1991年)のように、大きなガラスの一部が開くデザインだった。 珍品と切り捨ててしまうのは惜しい。楽しさを主眼にしたデザインで、機能性はともかく、こんなクルマがあるとイイね! と、世界中の自動車好きから評価されていたのを、私はおぼえている。当時、飛ぶ鳥を落とすいきおいともいえた米ゼネラルモーターズのヘッド・オブ・デザインも、セラを観て「これはすごい!」と、デザインコンセプトと作りのよさを褒めていたものだ。 問題は、つねにエアコンを効かせていないと夏場はかなり暑い点。もうひとつは、ベースになったのが、1.5リッターエンジン搭載の「スターレット」で、しかもベース車より130kgほど車重がかさみ、さらに上屋が重いので、非力であり、走りがいまひとつ、という点。これは当時としては、評価がむずかしかった。 とはいえ、いまでもじゅうぶん魅力的なスタイルであることは間違いない。中古車で見つかったら、乗ってみる価値があると思う。