紅麹サプリ騒動の小林製薬「死者ゼロ」回答も、弁護団は「評価できない」医師泣かせの“確認書”
「十分に補償しているとは評価できない」
一方、2024年10月には、大阪弁護士会に所属する弁護士17人が『紅麹サプリ被害者救済弁護団』を結成している。 現在は、どのような状況なのか。同弁護団の事務局長を務める、三浦直樹弁護士に話を聞いた。 「2024年4月に大阪弁護士会で相談を受ける“健康被害110番”を実施したのですが、“小林製薬の対応が遅い”とか“全然誠意が感じられない”という声が多くありました。その後も、企業の対応に不安を感じる声が続いたため、弁護団を立ち上げました。100人近くのお問い合わせがあり、すでに10人以上は代理人として受任しています」 企業の姿勢に疑問を感じる被害者が多くいるようだ。というのも、 「ご相談を受けている方から話を聞くと、小林製薬側は“医師にサプリの影響によるものかを判断してもらってください”と確認書を渡しているのです。しかし、医師も一般的に“サプリの影響によるものだ”と、科学的に断定することが難しいわけです。ある意味、医師としては誠実なのかもしれないのですが……」(三浦弁護士、以下同) 厚生労働省は、青カビから発生することのある『プベルル酸』が、紅麹の製造過程で混入したことが原因だと発表している。 しかし、仮に『プベルル酸』が混入したサプリメントを摂取していたとしても、ほかの要因によって、体調に異変が起きた可能性も否定できない。 「小林製薬が被害者に渡した書類を見ると、因果関係が《ある》《ない》《わかりません》の三択を医師に選ばせるものなんですが、断定的なことを医師はなかなかしてくれません。相談を受けている被害者には、安易に書類を提出しないよう伝えています」 そのうえで、小林製薬とはどのような話し合いをしているのか。 「小林製薬には、健康被害を受けた被害者であると認定してもらうには、どういうエビデンス(=根拠)が必要なのかや、摂取したことのエビデンスをどこまで求めるのか、どういった基準で補償を行うのかを問うている段階です。被害者の中には、月々の治療費は出してもらったと話す人もいるのですが、それがどういうエビデンスに基づいて、どういう計算式で支払われているかは、わからないんです。なので、われわれとしては、十分に補償しているとは評価できません」 例えば、サプリを摂取したことで腎機能が低下して透析が必要になるなど、治療を行っても改善の見込みがない“症状固定”の状態になった人は、従来のような生活を送ることが困難になる。 こうした将来の不安についても、補償が必要となるはずだが、 「私の知る限りでは、そういった補償の話にまで進んでいる人はいないはずです」